総裁への攻撃、本当の理由は別のところ?
世銀ではその後、この案件を主要国代表24人から成る理事会にゆだね、さらに理事会は7人の委員による臨時調査委員会をつくって対処することになった。この臨時調査委員会の委員長はオランダ人、他のメンバーはフランス、ノルウェー、ロシアと、欧州勢が多数を占め、残りはメキシコ、中国、エチオピアだという。このためこの委員会での総裁への対応は、結局は辞任を求める厳しい趣旨になるとも推測されている。
こうした動きに対しウォルフォウィッツ総裁自身は、リザさんの出向についても昇給についても「すべて世銀の倫理委員会の判断に従っており、なんの不正も違法もない」と反論している。それでもなお臨時調査委員会や理事会が辞任を求める決定を下せば、それに従うだろうという態度だが、米国政府はウォルフォウィッツ氏への支持を表明した。
米国政府代表として世銀の理事を2006年までの4年間務めたロバート・ホランド氏は、ウォールストリート・ジャーナルへの「真の世界銀行のスキャンダル」と題する寄稿論文でウォルフォウィッツ氏が攻撃される本当の理由はリザさんの昇給ではなく、同氏が総裁として世銀の汚職追放や経費削減のキャンペーンを熱心に進め始めたことだと解説した。
ホランド氏は4月20日付の同紙への寄稿で次のように述べていた。
- ウォルフォウィッツ総裁は世銀の援助受け取り国の腐敗追放を進めたため、援助供与の条件が厳しくなり、供与の増加をいつも願う世銀職員の激しい反発をかっていた。
- 同氏は世銀の各理事が自国の職員の処遇に介入する情実人事を排除し、60歳の定年に達した職員もコンサルタントとして保持し、その数が正規職員と同等になるという変則人事をなくそうとして、古手の職員の反発を受けた。
- 同氏は外部の専門家多数を世銀に採用し、旧来の経営方式を改善することを大胆に図り、従来の事実上の終身雇用を崩し、責任性、透明性の確立を進めたため、多数の職員の反対にあった。
だからウォルフォウィッツ総裁は多数の幹部職員の憎しみの標的となり、今回の「スキャンダル」も故意に拡大された、というのだった。
こういう米国側の主張を裏づけるように、ウォールストリート・ジャーナルは5月3日付の社説は「世銀の全職員約1万人のうち少なくとも1396人はライス米国務長官よりも高額の給与を得ている」と報じた。つまり米国務長官の年間給料約18万ドル以上を受け取る世銀幹部職員が1400人近くも存在するというのだ。世銀の給料スケールでは最高ランクは年間17万ドルから23万2360ドルまでで、このランクの給与取得者が全職員の17%をも占めているというのだった。しかも具体的にだれがどのランクでいくら給与を支払われているかは公表されないという。
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