愛人の給与はライス国務長官より高額
ウォルフォウィッツ氏の総裁就任とほぼ同時にリザさんが世銀を離れ、「出向」の形で米国務省に勤務する措置をとった。特殊な個人的関係による「利害衝突」の批判を避ける措置だった。この措置も世銀の倫理委員会に協議しての手続きだとされた。ところがその後のリザさんの給与の額が大幅に上がったことが問題にされた。
リザさんは世銀では最終的に年収13万3000ドル(約1600万円)だったが、出向先の国務省では年収19万3000ドルとなった。世銀から払われる出向先での給与である。リザさんの勤務先は最終的に国務省の外郭団体ともなったが、この給与額は変わらず、国務省のコンドリーザ・ライス長官の給与(年収18万ドル)よりも1万ドル以上も高いことが非難の理由の一部となった。
このリザさんの給与の急増額に対し、「ウォルフォウィッツ総裁が不当に影響力を使って、恋人への厚遇の措置をとったのだ」という非難の火の手が上がったわけである。非難の矢はまず世銀内部の職員組合から放たれた。ヨーロッパ出身の職員たちが先頭に立ち、ウォルフォウィッツ氏の米国防副長官としてのイラク攻撃の推進までも持ち出し、辞任を求めるようになった。
世銀加盟各国のなかにもこの批判に同調する国が出てきた。たまたま4月中旬にワシントンで開かれた世界銀行・国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会でもこの「総裁情実昇給疑惑」が取り上げられ、「組織の信頼と職員の士気に影響を及ぼす事態であり、懸念の対象となる」という遺憾の意を表する声明が採択された。なんの拘束力もないとはいえ、現職の世銀総裁への不信任状に近い声明だった。
反ウォルフォウィッツ風潮の強いヨーロッパでも、欧州連合(EU)の欧州議会が4月25日に世銀総裁の辞任を求める決議を採択してしまった。賛成333票、反対251票という結果で、かなりの反対があったとはいえ、厳しい審判だった。このような動き自体が世界銀行の長い歴史でも初めてのことだった。
この連載のバックナンバー
- 北朝鮮のミサイル発射があらわにした日米同盟の希薄化 (2009/04/14)
- 間近に迫るテポドン2号の脅威を読み解く (2009/03/31)
- 保守派の論客、ラッシュ・リムボウを知っているか (2009/03/17)
- 社会主義色が濃厚になったオバマ大統領の施策 (2009/03/03)
- ヒラリー訪日の意味 (2009/02/17)

