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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

第41回
中国の衛星破壊で米国は大ショック

国際問題評論家 古森 義久氏
2007年3月2日

 中国のこの1月の衛星破壊実験は米国を一気に硬化させた。中国がひそかに開発してきた衛星攻撃兵器(ASAT)を発射して、はるか上空を回る気象衛星を破壊したことは米国の官民に衝撃を与え、対中政策の見直しまで迫る結果をも招くこととなった。日本にとっての影響も深刻である。

 米国上院共和党の有力議員ジョン・カイル氏は1月29日、ワシントンで「中国の衛星攻撃兵器と米国の国家安全保障」と題する緊急演説で次のように述べた。

 「宇宙の安全は米国にとって致命的な国家安全保障であり、その安全が脅かされることは米国の安定そのものが危機にさらされることとなる」
 「中国は米国の防衛の戦略的中心が宇宙や人工衛星に置かれていることを熟知して、その破壊を意図し、実際の破壊能力を高めていることを今回の実験で立証した」

 現代の人間はどれほど人工衛星に依存しているのか。携帯電話や自動現金預入払出機(ATM)に始まり、自動車の運転案内のためのカーナビから株式のネット取引、金融市場の運営まで、いまの人間の生活の多くが人工衛星に密接にからみ、頼っている。その衛星システムが一気に破壊されてしまうとなれば、人間の生活も同様に一気に破壊されるという恐ろしい展望を今回の中国の衛星破壊という行為は突きつけたのだった。

 人工衛星は船舶の航行や鉱物資源の探査にも不可欠の役割を果たす。軍事面での衛星依存の度合いも測りしれない。特に軍事超大国の米国は各種の衛星に頼る軍事態勢を構築してきた。

 カイル上院議員の言を再び借りよう。

 「人工衛星は我が米国の軍事優位を支えている。米軍の部隊は偵察、通信、航行その他のミッションに関して衛星に依存している。現在、開発を進めている新鋭の軍事兵器システムもすべて衛星依存の度合いが高い。米軍のいかなる作戦も、通常、戦略、ミサイル防衛のいずれを問わず、宇宙依存の部分なしには機能できなくなっている」

 中国が成功裏に実験を果たした衛星攻撃兵器は、その宇宙依存の部分を破壊する、というのである。軍事超大国の米国にとってのショックが大きいのも当然であろう。

 
 

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