バックナンバー一覧▼

“外交弱小国”日本の安全保障を考える

NYタイムズに掲載された政策提言としての「日本核武装論」

 さて前置きが長くなった。

 以上のような背景から日本核武装論というのは、二重三重にバーチャル(擬似)の要素が強い議論だったことが分かるだろう。今回の北朝鮮の核実験の直後にドッと出た「日本も核武装へ」という議論も、ほぼすべてその範ちゅうのようである。

 しかしただ一つ、例外があった。

 ブッシュ政権で大統領補佐官を務めたデービッド・フラム氏がニューヨーク・タイムズ10月10日付に発表した寄稿論文での主張である。フラム氏はこの論文で北朝鮮とその背後にいる中国を厳しく非難していた。北朝鮮が米国をはじめ国際社会をだまして、核実験に踏み切り、しかも中国はその冒険を阻止できる立場にあるのに止めなかった、と糾弾している。だから米国は北朝鮮と中国にそんな危険な挑発行動への代償を払わせるために一連の断固とした措置をとるべきだ、と主張している。

 フラム氏はそのなかで日本について次のように述べていた。

 「米国は日本に対しNPTを脱退し、独自の核抑止力を築くことを奨励せよ。第二次世界大戦はもうずっと昔に終わったのだ。現在の民主主義の日本が、台頭する中国に対してなお罪の負担を抱えているとするバカげた、見せかけはもうやめるときだ。核武装した日本は中国と北朝鮮が最も恐れる存在である」。

 「日本の核武装は中国と北朝鮮への懲罰となるだけでなく、イランに核武装を思いとどまらせるという米国の目標にも合致する。日本の核武装の奨励は、他の無法国家がその地域の核の均衡を崩そうとする場合、米国とその友好諸国がその試みを積極果敢に正そうとすることをイランに知らしめることになる。米国はイスラエルの核攻撃能力を高めることもできるのだ」。

 大胆だが明快な主張である。今の米国ではもちろん超少数派の意見でもある。ブッシュ政権にも日本に核武装を促すという気配はツユほどもない。だがそれでもこうした政策提言が初めて堂々と出てきたことは注視せざるをえない。

 
 

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。