今までの「日本核武装論」は「オオカミがくる」式の警告
北朝鮮の核武装が国際的な懸念の対象となったのは1990年代のはじめだった。その結果、米国と北朝鮮との間で1994年に米朝核合意枠組みという協定が調印された。この協定は二国間の交渉と合意の産物だった。今の北朝鮮がしきりに求める二国間交渉の結果だったのだ。
この協定の結果、北朝鮮は核兵器開発に必要なプルトニウムの軍事転用を全面的に停止し、米国側がその報償として原子力軽水炉2基を北朝鮮のために建設して供与する、しかもその間に重油や食糧までを提供するという約束が交わされた。
しかし北朝鮮は協定のサインの時期からひそかにウラン濃縮での核兵器開発を続け、全世界を完全にだましていたのだ。だから今更「米国は北朝鮮との二国間交渉を」と主張する意見には説得力はない。
「北朝鮮が核兵器を持つと、日本も核武装に走る!?」――という予測は、だから1990年代からあったのである。しかしこの「予測」は一貫して、「オオカミがくる」式の警告であり、カードだった。日本の核武装というのは決してあってはならないこと、危険なことであり、そんな状態を生まないためにも北朝鮮の核武装は許してはならない、という趣旨だった。
しかもその「オオカミ」は日本の政府の非核政策や国民の反核感情からみれば、絶対にありえない展望であるのに、国外の自称専門家が勝手にそんなシナリオを描くという場合が多かった。
「日本の核武装」という警告は米国から発せられ、中国に向かってぶつけられることが多かった。日本が核兵器を持つという事態は中国にとって最も忌避する可能性だから、その原因となる北朝鮮の核武装を中国が阻止すべきだ、という理屈である。肝心の北朝鮮に対しても、この「日本の核武装カード」は使われることがあった。北朝鮮が核を持てば、最大の敵の日本も核を持つことになるから、核武装をやめておけ、という説得だった。だが北朝鮮に対するこのカードはまったく効果がないことが判明したわけだ。
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