この近未来フィクションをどう読むべきか
「ショーダウン」のシナリオ記述はまだまだ先があるのだが、日本にとってはあまりに惨めな仮想をすべて紹介する必要もないだろう。第三者からみればサスペンスに富んだシナリオの結末を明かしてしまうのは著者たちへの非礼かもしれない。
しかし、ここまでの日中戦争の近未来フィクションをどう読むべきか、は日本側にとってはまた別問題である。そうした物騒な設定をセンセーショナルな空想だとか、まったくの根拠のない妄想、劇画の世界、などと一蹴することも見識のうちかもしれない。だがこの書は前述のように国防総省高官までを歴任した専門家二人によって書かれ、レグネリー社という著名な出版社から出されている。レグネリー社は保守系の書物の刊行が多く、この『ショーダウン』も保守系の軍事専門家からリベラル派の親中傾向への警告ともなっている。保守系の思考はいまのブッシュ政権下の米国では主流であり、この書も一般の新聞や雑誌の書評で取り上げられるようになってきた。
この書をまじめに受けとってもよい最大の理由は、著者たちが血なまぐさい戦争のシナリオを「実際に起こしてはならない危険な可能性」として使っている点であろう。
著者のバビン、ティムパーレーク両氏は冒頭の第1章で以下のように書く。
「もし米国あるいはその同盟国と中国との戦争が起きる場合、それがどのように起き、どのように戦われるか、私たちは中国の歴史、能力、意思に基づき、分かりやすいシナリオとして明示した。その種の戦争がどう起きうるかを生々しく描写すれば、米国とその同盟国はおそらくその戦争を外交、封じ込め、抑止などの手段によって避けることができるだろうと信じるからだ」。
要するに戦争の防止が戦争シナリオ提示の目的だというのである。
そしてそのシナリオ提示は、ものすごい勢いで増強される中国の軍事力に対する警戒や懸念が原因だとされている。『ショーダウン』の著者たちは、中国がアジアからやがてはグローバルな覇権を目指し、米国と正面から対決しようという意図を固めていると断じているのである。
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