背後にちらつく中国系反日団体の存在
しかしそれから1週間ほどの間に、もう一つ、おもしろい事実が判明した。ロスアンジェルスに拠点をおく「第二次大戦アジア史保存連盟」(ALPHA)という在米中国人中心の政治団体が昨年12月に「ハリウッドがついに『南京・クリスマス・1937』という映画を制作することになった」というプレス発表をしていたことを発見したのだ。この発表は文匯報の例の記事が出るよりも1ヶ月以上前の出来事だった。イーストウッドやストリープの名前こそ出していなかったが、映画のタイトルは文匯報の記事とまったく同じだった。「ハリウッドの映画」という点も合致している。そうした内容がALPHAの2005年12月10日の「プレス発表」として掲示されていたのだ。だから順序としてはこのALPHAが虚報のそもそもの発信源のようにみえてくる。
びっくりするとともに、なるほどと思った。私は実はこのALPHAという組織名をみたとたんにぎくりとしていたのだ。この在米中国系組織はきわめて政治的な活動をする団体で、1998年ごろにはアイリス・チャン氏著の悪名高き書『ザ・レイプ・オブ・南京』をアメリカ国内で大々的に宣伝し、販売に奔走した軌跡があったからである。
ALPHAはどうみても明確な反日団体だといえる。みずからのウェブサイトには組織の目的などについて以下のように書いている。
「わが組織は第二次大戦中に日本軍が働いた非人道的で過酷な残虐行為について一般国民を教育することに献身する」
「日本政府は七十五年前に始めた戦争犯罪に対し、被害者への賠償をなにもせず、公式の謝罪もしないままでいる」
組織自体の存在目的がこのような事実に反する理由をあげての日本攻撃であれば、はっきりと反日団体と呼ぶ以外にないだろう。
そのうえALPHAは中国当局が明確に関与する「世界抗日戦争史実維護連合会」という組織の傘下に属している。同連合会は中国国営の新華社通信とつながるウェブサイトを持ち、中国政府からの直接の支援を得て、中国の主要都市で種々の会合を開いている。そんな組織の一端であるALPHAが日本向けの「南京ハリウッド映画」の情報を流していたのだ。そうなると、どうしてもそこに一定の政治的意図が黒い影を広げてくる。日本側を動揺させ、混乱させる意図である。
そのへんの反日の意図は前述のALPHAの「プレス発表」に以下のような記述があったことからも、体系的に位置づけられてくる。
「日本の国連安保理の常任理事国入りに反対する署名を5週間足らずのうちに世界各地で合計4200万人分も集めた」
この署名活動は2005年春だった。つまり中国本土で日本の国連常任理事国入りへの動きに反対する反日デモがいっせいに起きた時期である。ALPHAはその土壌をつくるような反日署名活動を国際規模で展開していたと自画自賛しているのだ。その同じ組織が「南京ハリウッド映画」の虚報も打ち上げていた。その二つの点の間には文匯報のガセネタが存在したことになる。
こうした動きはやはりどうみても特定の当事者たちによる日本に向かっての情報戦略として受け取れる。そうした攻勢に対しては日本側としても、対外イメージへの打撃や実際の外交への被害を防ぐためには、敏速で明確な対応が不可欠となる。私が「南京ハリウッド映画」の虚報の背景を探って痛感したのは、この点だった。
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