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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

あっけなく覆ったデマ情報

 そこで私も動くことにした。アメリカ駐在の新聞記者としてハリウッドはいわば管轄内であり、上海発のこの情報の真偽を確かめることにしたのだ。その確認作業は本来、もっと早い時期に実行すべきだった。だがテーマといい、読売新聞がすでに報じた点といい、あまり乗り気のする取材ではなかった。しかし日本側での懸念がこれだけ広まると、もう無視はできない。とにかくアメリカ側の当事者のイーストウッド氏に直接に問い合わせることにした。

 ハリウッドの映画関係組織をたどっていくと、わりに簡単にイーストウッド監督の関連機関はわかった。そこに電話をすると、本人と話すことこそできなかったものの、イーストウッド氏の映画活動すべてを取り仕切っているというエ―ジェント(代理人)のレオナード・ハーシャン氏に直接、問いあわせることができた。読売新聞の記事が出てから一ヶ月以上が過ぎた2月24日のことだった。私自身が他の取材や報道に追われて、ぐずぐずしている間にそんな時間が流れてしまったのだ。

 さてハーシャン氏に日本の新聞記者であるという自己紹介をして、すぐ「日本軍の南京攻略についての映画をイーストウッド氏が監督するという話がいま中国や日本で広まっていますが、まちがいないですか」という質問をした。ところが質問を述べ終えないうちに太い声の答えが返ってきた。

 「Untrue! Absolutely untrue」

 アントゥルーという英語は文字どおりには「事実ではない」という意味だが、実際の会話で使われる場合、「ウソ」の意に等しい。つまりは上海発の情報はウソだというのである。 

 ハーシャン氏はさらに力強い声で語った。

 「南京に関する映画にクリント・イーストウッドがかかわるという情報にはなんの真実性もありません。イーストウッド本人はいま忙しく、直接に答えることができませんが、彼がその種の映画に出演するとか、監督をするとかいう話はまったく事実に反します。あなたもジャーナリストとして彼がまったく(南京に関する映画に)かかわりがないことを日本や中国の人たちに幅広く伝えてください」

 イーストウッド氏のエージェントのハーシャン氏はここまで一気に語るのだった。当初の情報の完全な否定だといえるだろう。まさに当事者による否定である。しかもハーシャン氏は「私自身もその南京映画の話を中国の新聞で読んだという中国人男性から聞いたことがあるが、だれかが広め始めたデマでしょう」とまで明言するのだった。

 あっけない取材結果だった。上海の文匯報の記事も、それを確認もせず転電した読売新聞の記事も、デマだったということである。

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