アメリカの専門家も東京へのテロを予想
アメリカ側にもブリュギエール氏の警告に同調して日本でのテロの危険に警鐘を鳴らす専門家たちが存在する。
アメリカの中央情報局(CIA)や軍関連機関の対テロ部門で活動した経験を持つフレッド・バートン氏はブリュギエール氏に賛同する形で次のように述べた。
「テロリストが最大の標的とする米欧型の富や力のシンボルは米欧よりもテロ防止態勢がずっと弱体の東南アジア、北東アジアでも顕在なわけで、その破壊を目指すことは論理的な必然となる。アルカーイダはアジアにテロ実行のためのインフラを持たなくても、なお爆弾や車両搭載の爆発物を即席で製造する能力は十分に持っている」
「富や力のシンボルという点ではアジアでは東京、シンガポール、香港が格好の標的となる。なかでも日本はイラクでの米軍の治安維持のための対テロ活動に協力し、アメリカ政府からも頼りにされているから、日本へのテロ攻撃はその日本政府の政治意思を弱め、イラクからの自衛隊撤退に追い込むことが目標とされるだろう」
「日本はアジアの他の諸国とくらべても、テロ防止のための有効措置をとっている度合いが低いといえる。日本では当局がテロ容疑者の身柄や住居を一方的に抑え、捜査、捜索をするというテロ防止の具体的強制措置が人権擁護という観点から許されない場合が多いからだ。さらにテロ防止では致命的な重要性を持つ情報収集のための政府機関が単一には存在せず、情報収集の責任も能力もいくつかの機関に分割されていることもある」
なるほど、自由に制限のない個人優先社会、情報収集をスパイ活動と呼んで忌避する傾向、不測の事態に備えて警備を厳しくすることへ反警察的な反発など、戦後の日本の「美徳」とされてきたような異端な特徴がみな国際テロを誘いやすいネガティブな要因とされてしまうのである。
日本の安全保障政策に詳しく、日本在住の経験も長いスタンフォード大学の日本研究者ジョン・デボア氏も日本のテロに対する脆弱性を強調する。ただし標的は金融センターよりも交通手段となる確率が高いという。
地下鉄サリン事件5周年・霞ケ関駅で黙とう
地下鉄サリン事件で殉職した駅員ら犠牲者を悼み、黙とうをささげる営団地下鉄職員ら(午前8時、東京・地下鉄霞ヶ関駅)
(写真提供:時事通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うこと は禁じられています)
「アルカーイダはこれまでに日本へのテロ攻撃の意図をすでに表明したといえる。その場合の標的は地下鉄など公共交通網がまず第一に選ばれるだろう。日本では1995年にすでにオウム真理教によるサリンガスのテロが地下鉄で起きている。だが東京の地下鉄はその経験にもかかわらず、テロ防止の警備措置をあまり徹底してはとっていない。混雑した通勤の電車や地下鉄の車内、さらには駅の構内がもっとも危険だといえる。一日350万人もの乗降客が通るという新宿駅などテロ標的になる危険はもっとも高いだろう」
欧米の専門家との連携を
当然ながら、こうしたアメリカやフランスの専門家たちが述べる言葉が絶対の真理だとはいえない。その言葉のあちこちに無理をした推測や断定もうかがわれる。しかしその一方、逆のあちこちには、なるほどと、うなずかざるを得ない指摘もある。
アメリカやフランスでは国家の総力を投入するような形の情報収集機関があって、科学的、人的な手段を動員し、テロリスト関連の情報の取得に努めている。民間の専門家たちがテロについて語る際も政府の情報機関、諜報機関が得た情報を基礎にしている場合がほとんどなのだ。とくにいまのテロ組織ではもっとも大きな脅威となっているイスラム系組織の背景となるイスラムの宗教や文化や社会について、わが日本の研究は欧米にくらべてはるかに遅れている。だからアルカーイダの秘密の動きなどは欧米の情報の確度が高いことは否定できず、その種の情報に基づいて語る専門家たちの診断にも傾聴すべき部分があることは明白である。
わが日本としては、そうした部分に重点をおき、素直かつ謙虚に警告を受けとめるという態度が最善であろう。そして過剰反応という批判を覚悟してでも、それなりのテロ防止、テロ抑止の新たな対策をとるべきである。テロでも、侵略でも、戦争でも、「備えあれば、憂いなし」こそがベストの対応であって、どんな場合でも決して、旧社会党の非武装論的な「備えなければ、憂いなし」であってはならないのである。
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