第67回
日本を豊かにする住宅政策(1)
さくら事務所取締役会長 長嶋 修氏
2007年7月4日
世界でも有数の経済大国にのし上がった日本。しかし、日本国民の住環境はどうだろうか。わたしたちの住まいや街は、はたして世界有数の豊かさを備えているだろうか。
海外から日本へ戻り成田空港からの帰路、日本の街並みを見て暗たんたる気持ちになるのはわたしだけではないだろう。あるいは高層ビルから見下ろす街並み――その雑然さは、残念ながら美意識の醸成とは無縁だ。
なぜ日本の街はこんなにも秩序なく、ごちゃごちゃとして汚いのだろう。湯水のように税金を使って公共投資を行ったわりには、電線の地中埋設率は先進国で最低だ。観光立国を目指すと言っても、こんな状態でどうやって目指すのか。日本の住まいは、街は、本当はもっと、いくらでも豊かなものにできるのではないだろうか。
教育の問題も、年金の問題も、今、世の中をにぎわせている社会問題の多くは、日本の住まいや街並みがより豊かなものになり、本当の意味で資産となることから、大きな解決の糸口を見出すことができるはずだ。内需主導の底固い経済体系だって出来上がるだろう。
サッチャー首相時代の英国では『ホーム・オーナーシップ・デモクラシー』といい、英国国民が良質の住宅を持つことによって民主主義の安定的な基盤が出来ると考えた。米国では、国民が持つ住宅や街の資産価値を上げる方向に政治が動くことを、国民が強く求めている。
一方、日本の政治は残念ながらこれまで、住宅や街を資産と考えて動くことはなかった。国は住宅の供給を経済の原動力として扱い、国民に資産を持たせるという概念に乏しく、近視眼的な景気対策の道具として住宅は扱われていたのだ。政治の世界にも住宅の専門家が少なく、問題意識が希薄だったことも否めないだろう。
日本では毎年20兆円の住宅投資が行われているが、国富として蓄積されているのはこの10年の間、250兆円程度とまったく増加していない。いくら住宅投資を行ったところで、造ったそばから価値がどんどん下落していくからだ。そういった意味で国や政治の責任は非常に重かった。
とはいえ、例えば政治家はあくまで国民によって選ばれるもの。政治家の姿も、国の姿勢も、国民のリテラシーを正確に反映しているともいえる。わたしたちの住まいや街並みの豊かさの現状は、わたしたち国民が選択した結果なのだ。
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