これまでと違う方向へかじを切れ
多くの人がローンを組んで住宅を購入する以上、住宅の価値は融資価値に限りなく等しい。住宅金融支援機構は、一定の耐震性などが認められる中古住宅には、より低く、長く住宅ローン融資を提供するべきだろう。そうして中古住宅の不当な下落を抑え、価値が落ちづらい住宅市場が出来上がれば、いま住んでいる住宅の価値がゼロであるがゆえ、金銭的な事情で住み替えたいのに住み替えられないという、多くの住宅所有者が抱えるジレンマから開放され、住宅を購入することがまさに貯蓄になる。土地価格がいくら上がったところでそこに投資は生まれないが、建物に投資をすることで価値が保全されるならリフォーム需要も伸びよう。先進国で最も住み替えをしない日本国民の住み替え頻度も高まるし、なにより価値の落ちない住宅という資産を所有していることで安心感も醸成される。ストック市場中心の住宅市場を作り上げるのが、今後の日本のあるべき住宅政策だ。
しかしそれでは、住宅市場全体として経済的に回らないではないかという異論もあろう。中古住宅市場でいくら住み替え頻度が高まり建物への投資が活発になったところで、新築住宅建設の経済効果には及ばないだろうという主張で、それはそのとおりである。だがそもそも新築住宅建設に景気刺激の解を過度に求めることで、既に住宅市場は大きくゆがんでしまっている。
住宅市場のみならず、日本経済の産業構造を根本的に転換する必要がある。例えば建設業は、建設投資がピークから40%以上減少しているにもかかわらず、就業者は20%弱しか減少していない。産業構造、雇用の状況や日々の暮らしを支える日本の構造全体、そしてそれらをつかさどる政策について、これまでと違う方向へかじを切ることが、今こそ求められている。少なくとも住宅の世界はもはや「需要不足」ではなく「供給過剰」だ。
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