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不動産の達人が教える「失敗できない時代の住宅選び」

景気対策は既存住宅との調和を考えて

 もう一人は、リチャード・クー氏(株式会社野村総合研究所主席研究員)。氏の提出した「ご参考資料」には以下のような記述がある。

「外需に頼れなくなった今、内需主導が不可欠だが、他の先進国に比べ、日本が一番遅れているのが住宅」「外国がすべて住宅を資本財とみなし、富の上に富を築いてきたのに、日本だけは耐久消費財扱いして、上物は築後15年でほぼタダになる住宅を形成してきた」「その結果、日本では446兆円もの富が失われた。戦後、GDP成長率が高かった割には、人々の生活は(同等の成長を経験してきたアジアなどに比べ)改善していない」

 この認識は正しい。業界人ではない氏がこのような認識を示してくださることは非常にありがたい。日本の住宅投資は毎年およそ19兆円程度。建物の価値は氏の言うように15年でゼロになることはないが、新築を買って人が住んだ瞬間に15~10%も価値が下落。10年で半値。25年程度でゼロになるというのが住宅市場の実態である。つまり10年で190兆、20年で380兆円の富を損失していたわけで、これは無駄な道路を造る公共工事となんら変わりがない。公共工事と異なるのは、負債が住宅購入者に集中する点だ。住宅購入者の多くは消費を抑えることになるから、近視眼的な従来型の新築住宅購入キャンペーンは、内需の痛みが後からやってくる。

 しかし、ここから先に書かれていることは非常に残念だ。

「建て替えの必要がない立派な住宅が供給されるようになれば、人々はその分消費に回せる所得が増え、内需にもプラスになる」。これはいいのだが「これを日本で実現するためには、“建ぺい率や容積率を大幅に緩和し、良質で広い床面積を安価に供給できるシステムを作り上げる必要がある”」としている。

 もしこの政策を行った場合には、建ぺい率や容積率を上げた地域だけ地価が上昇し床面積も増えることから、そこへ人も吸収されてしまう「ストロー現象」を生み出す。周辺の地価は下落し空室も増加することになる。建ぺい率や容積率を上げる政策は、都市計画全般をよく考慮した上で行う必要があり、景気対策のためにと安直に行うと、後で大きなダメージを食らう。無秩序な都市政策は都市や周辺地域の価値を下げる。

 何よりこの政策を行った場合、既に建っている住宅の資産価値が下がってしまう。既に建っている住宅の購入者は住宅ローンを抱えている。住宅の価値が下がればその分だけ家計内の「不良債権」が発生する状況が生まれる。建物に価値を認めない日本の住宅市場では、現在、既に多くの住宅購入者の家計がこのような状況に陥っている。一時的な景気刺激にしかなり得ない政策だ。

 ほとんどの世帯が住宅ローンを組んで住宅を購入しているが、実は多くのケースで住宅の市場価値(資産)より住宅ローンの残高(負債)のほうが多い。なぜなら現在、日本の住宅査定は前述したとおり、耐久消費財のように価値をどんどん減らし、25年程度で価値がゼロになるというものだからだ。建物の価値の目減りと、住宅ローン残高の目減り競争をしているというのが、いまの中古住宅市場の姿なのである。

 そこにきてさらに、このような方策を行うことは、既に建っている住宅の価値を下落させる方向に働くのだから、それをどうするのか議論しなければならない。また既に700万戸以上も余剰している住宅をどうするか、増加の一途をたどる空き家やスラム化する恐れのある地域をどうするかということについて、同時に処方箋を示さなければならないだろう。

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