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あなたを狙う「犯罪テクノロジー」「進化」を続ける、犯罪者の「ハイテクノロジー事情」とは

「偽札取材のプロ」だった長井さんを悼む

 とはいえ、安心はできない。ウワサによると、さらにバージョンアップした偽1万円札も既にあるらしい。偽札犯たちは少しずつ練習しながら、だんだん質を上げていくのだ。

 私はこの偽札を鑑定しながら、ふとミャンマーで殺されたジャーナリストの長井健司さんを思い出した。長井さんならこの偽札を見て、「フィリピンで取材しましょう」「中国で偽札グループに接触しましょう」と私を口説いたに違いないからだ。

 第8回「希有なジャーナリスト、長井健司さんに捧ぐ」にも書いたが、私と長井さんは何度となく偽札の取材で東南アジアを取材旅行し、互いに危険な目に遭ってきた。

 長井さんは本当に取材に命を賭、取材以外に興味のない人で、海外に行くときも荷物の大半は撮影機材。着替えのパンツと靴下を私から借りたほどだ。そして複数のビデオカメラを身に付け、常に充電した電池パックを鞄に入れていた。あれほどジャーナリスト魂を持ったジャーナリストもいないだろう。

 ミャンマーの反政府デモを取材中に殺害されたため、政治・政変の取材を専門にしていたと思われているようだが、長井さんほど偽札に関して取材経験の豊富なジャーナリストはいない。彼は「世の中から根絶したいものはエイズ、偽札、金権(腐敗)政治だ」といつも言っていた。

 亡くなってから既に1年半経つが、今もふと長井さんから「偽札を追いかけにいきましょうよ」という電話がかかってくるような気がする。

プロフィール


松村 喜秀(まつむら・よしひで)
松村テクノロジー代表取締役

松村 喜秀氏

 1949年島根県生まれ。大手電機メーカーを経て独立、センサー技術などを手掛けるフリーの設計士となる。1983年、産業用機器設計・試作品製作を行う松村エンジニアリング設立。87年、ソウルオリンピック向けに偽札鑑別機開発を大手企業より依頼され、翌年開発に成功、販売。北朝鮮製と思われる偽100ドル札を発見、「スーパーK」と命名し、世界的に有名となる。その後も多くの精巧な偽札を見破り、各国メディアに掲載、出演。

 世界中の特殊捜査機関の講師・顧問を務め、日本の大学で講師も務める。偽札鑑別機以外にも大手が真似できない特殊セキュリティー機器、指紋照合装置などを開発、約250件の特許を取得。クリスチャンであり、米国空軍基地教会で長老(エルダー)を務める。私財を投じ、教会や無料老人ホームなどの計画を進めている。

 主な著作に、「ビッグバンで偽ドルがやってくる(旬報社)、「偽造鑑定人調査ファイル」(講談社)、「スキミング~知らないうちに預金が抜き盗られる」(扶桑社)。

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