のりをなめて分かった偽造印紙
かつて、わたしも偽造印紙シートの鑑定をしたことがある。金券ショップの経営者に鑑定を頼まれたのは1万円の収入印紙シートの束。おそらく数千枚はあったろうか。非常に精巧に出来ており、目視と手触りだけでは偽物と分からなかった。
見た目と手触りというのは実は鑑定において重要な作業で、このときの第一印象があやしければ、ほとんどの場合が偽である。ところが、この印紙シートは目視と手触りだけでは何かが違うとは感じたが、確たる証拠は見つからなかった。
そこで、ルーペで細かにチェックしたが、やはり異常は見つからない。紙の組成も本物と同じだった。紙の繊維質の中に筋のようなものがあり、わたしたちはそれを「骨」と呼ぶのだが、以前、この骨の形状が異なっている偽造印紙を見つけたことがある。ところが、そのときは骨も同じだった。
さらに紙質を確認するために特殊な蛍光マーカーを印紙の端につけて、色の浸透具合を観察したが、本物と同じだった。インクの成分を見るために除光液を塗って反応の仕方を確認したが、これも本物と変わりがなかった。
せっぱ詰まったわたしは、苦し紛れに印紙の裏ののりをなめて味を確かめてみた。昔、スーパーKの鑑定でも札を切って食べたことがあるが、味も重要な鑑定要素だ。
すると、のりの味が本物と微妙に違った。そこで、印紙の裏部分をルーペで丹念に隅から隅までチェックすると、途中にのりづけのムラがあることが分かった。ほかのシートも同じ場所にムラがあった。
これで偽造と分かったが、それほど精巧な偽造印紙が世の中には出回っているのだ。おそらく東南アジアで偽造され、日本では暴力団などによって、金券ショップで売りさばかれているようだ。
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