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“危機管理時代”の知的護身術

第2回
「危機管理能力」は海外旅行の必須アイテムだ!!

安全生活アドバイザー 佐伯 幸子氏
2005年7月19日

 先頃、英国ロンドンで発生した同時多発テロは甚大な被害をもたらした。予測できないこうしたテロに対しては、国の対策に頼るしかないこともあり、防ぐことは難しい。だが、個人に降りかかる危険は自分で防ぐことが可能なものもある。今回は、あえてここに的を絞って書こう。

今年の夏の渡航者数

 JTBが7月5日に発表した【2005年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向】によると、今夏7月15日から8月31日の夏休み期間中に海外旅行に出掛ける人は、前年比0.4%増の249万人に上るという。1億2768万人のうち、約1.95%、すなわち国民の50人に1人弱が海外へと旅立つことになる。

 一体どれだけの人が犯罪被害に遭うのか、その認知件数は“過ぎて”みなければ分からない。だが、これまでの被害の実態を知ることは、海外での犯罪被害を未然に防ぐ、防犯のヒントとなるはずである。

昨年1年間の犯罪被害の実態を知る

 外務省 海外安全ホームページの海外邦人援護統計によると、昨年(2004年)1年間の海外渡航者数は、前年比26.6%増の1683万1112人(法務省調べ)で、在外公館等が取り扱った事件・事故に係る援護件数の総数は1万6023件(対前年比10.7%増)、総援護人数は2万1871人(対前年比25.6%増)だった。事故・災害に関する人数(件数)が、2003年度の875人(396件)から4427人(386件)へと大きく増加しているのは、昨年末に発生したインドネシア・スマトラ島における大地震・津波災害によるところが大きい。

 「犯罪被害」は、前年の6253件から6410件(対前年比2.5%増)と増加した。そのうち80%以上の大多数が窃盗被害の5169件(対前年比7.0%増)であり、詐欺(455件)、強盗被害(442件)と続いている。

図1

図2

恐ろしい犯罪の手口

 窃盗や強盗、詐欺といった財産犯被害の内訳は、置き引きが5169件、スリが1274件、その他が1670件である。この「その他」は、インターネットカフェ、ビーチ、公園、ゲームセンター、駅構内等である。

 置き引き被害は、「レストラン497件」「空港249件」「ホテル443件」「デパート72件」「列車・長距離バス297件」「路上・地下鉄155件」「その他512件」の計2225件。主な手口としては、ホテルやレストランでの食事の際に見られる。ビュッフェスタイルで食事を取りに行っている間に、席に置いておいた荷物を盗まれているのだ。

図3

 スリ被害は、「話し掛け73件」「道案内依頼20件」「子どものスリ集団37件」「集団スリ161件」「ケチャップ、コイン落としスリ等(※1)21件」「その他962件」の計1274件に上る。スリ被害のほとんどが無意識のうちに被害に遭っているため、具体的な手口や場所は分かっていない。欧州では特に、発車直前の列車の窓の外から声を掛けられ、気を取られているうちに仲間が荷物等を盗むという手口が多い。

※1 ケチャップ、コイン落としスリ:「上着にケチャップがついていますよ」「お金を落としましたよ」と声を掛けて、上着を脱ぐのを手伝ったり、一緒に小銭を拾うフリをしている間に財布などを盗む手口。もちろん、スリがケチャップを付け、わざと小銭をばらまくのだ。

図4

 その他は、「車上狙い541件」「空き巣231件」「ひったくり406件」「その他492件」の計1670件である。

図5

 強盗被害は、「バイク・車その他の強奪112件」「睡眠薬強盗59件」「侵入強盗36件」「カージャック14件」「羽交い締め強盗99件」「その他120件」の計442件。特に欧州地域を中心に、単独旅行者および女性グループが標的となって、首を絞められたり、羽交い締めにされて、所持品を数名によって強奪されるのが主な手口である。

図6

 詐欺被害は、「いかさま賭博136件」「暴力キャッチバー24件」「宝石・洋服詐欺48件」「偽警官・ガイド48件」「寸借詐欺40件(※2)」「その他159件」の計455件。いかさま賭博は東南アジアを中心に、「日本に行く家族がいる、日本のことを教えて欲しい」などと言葉巧みに誘い入れて、トランプ賭博を持ち掛けてお金を巻き上げる手口がほとんどだ。アジア地域においては、高価な宝石・盗品・洋服等を20歳代から30歳代の日本人に売り付ける手口もある。

※2 寸借詐欺:外国で日本人が、「現金やクレジットカード等を紛失あるいは盗難に遭い困っているので助けて欲しい」などと言って、パスポートを見せたり、日本の住所を書くなどして安心させて金を騙し取る手口。同じ日本人だからと油断していると親切心を裏切られる。

図7

 さらにアジア・欧州地域においては、街中で声を掛けられて話していると突然、私服警官と自称する人物が現れて、「麻薬取引をしているのではないか」と、身体検査をされている間に財布の現金を盗まれるケースもあるという。

 少しばかりの報酬で荷物を預かって、知らぬ間に「麻薬の運び屋」として逮捕されて、国によっては死刑や終身刑を宣告されることもあるのだから、人への親切も考え物だ。

 
 

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