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父親のための親力養成塾

第42回 経済の論理に洗脳された人々
       ――本当に「しかる」理由はあるのか

親野 智可等氏
2009年1月30日

 人を感情的にしかることには、大きなリスクがある。相手が子どもであろうが部下であろうが、ことは同じだ。

 話を進める前に、「しかる」という言葉の意味をはっきりさせておきたい。広辞苑によると、「しかる」とは「声を荒立ててとがめる」ことだ。また、大辞林によると、「相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責める」ことであり、大辞泉によると、「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」ことだ。

 この「しかる」という言葉を、多くの人が誤解しているようだ。「しかる」というのは、「声を荒立ててとがめる」「強い態度で責める」「強くとがめる」ことなのだが、「指摘する」「注意する」「諭す」などと同じレベルで使っている人が多いようだ。

 ところで、最近、わたしは知人から聞いた話で改めて感情的にしかることのリスクを感じた。19歳の青年、A君は、子どものころからおとなしくて、人と話をすることが苦手だった。学校にも、行ったり行かなかったりで、ときに長期間の不登校になったこともあった。わたしの知人によると、一種の場面緘黙症(ばめんかんもくしょう=家庭では普通に話せるが、学校など特定の場所では話せなくなる状態が長く続くこと)かも知れないとのことだが、定かではない。

 親や親戚はA君を温かく見守って育てた。特に10歳年上のいとこのお兄ちゃんは、A君のことをよく理解して、いつも一緒に遊んだり勉強を教えたりしていたという。高校も、行ったり行かなかったりだったが、なんとか卒業し、地元のピザレストランで働き始めた。

 店長さんもとてもいい人で、A君に仕事を教えるだけでなくいろいろな面倒をよく見てくれた。また、ほかの店員と仲良くできるように気を回してくれたりもした。それで、だんだん、A君の表情も明るくなってきた。

 だが、人と話すことが苦手のA君は「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございます」と大きな声で言うことができない。ぺこりとお辞儀をしながら、小さい声でつぶやくように言うのがやっとなのだ。それでもA君にとっては大きな成長だ。店長は、そんなA君を温かく見守ってくれていた。

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