野球を選んだのは父ではなく本人
よく、野球選手のイチローのお父さんの例が出されるが、イチローのお父さんはインタビューではっきりとこう答えていた。
「もし、イチローがサッカーをやりたいと言っていたら、わたしもボールを蹴っていたでしょう」
野球を選んだのはイチロー自身なのだ。ところが、メディアではイチローが野球をやりたいと自分で言ったという話があまり出てこずに、父親がバッティングセンターでバッティングに付き合ったなどという話ばかりが強調される。
イチローは既に3歳のときから、バットとボールをおもちゃに、寝るときも手放さなかったそうだ。野球がしたくて、したくて、お父さんを引きずり込んだのだ。お父さんがイチローを野球選手にしようとしたと思っている人が多いだろうが、実際はそうではない。
魚が大好きで魚に関するいろいろな仕事をして、東京海洋大学客員准教授も務めている「さかなクン」も自分から望んで魚博士になった天才キッズだ。
さかなクンは小学2年のときに友だちが自由帳に描いたタコの落書きに「本当にこんなかわいい生き物がいるんだ!」と感動し、それからタコの図鑑を読んだり、魚屋に行ってタコを眺めたり、お母さんに頼んで1カ月間、ずっとタコ料理を作ってもらったりした。
タコ好きから次第に魚のかわいさに引かれて、魚全般に興味がわいた。お母さんはそんなさかなクンを海や湖、水族館、水槽のある魚屋など、ありとあらゆる魚関連の場所に連れて行ったという。
普通なら、「魚なんかにかまっているより、勉強しなさい」としかるのだろうが、さかなクンのお母さんは偉かった。そのおかげで、彼は趣味が仕事になって大活躍している。
こういう天才キッズ教育ならどんどんやってもらいたい。もし、飽きたら別のことをすればいいのだから、手助けしてくれた親を恨むわけがない。仮に別のことをやり始めても熱中体験は必ず将来、生きる。
実はさかなクンも以前はゴミ収集車に熱中していたため、お母さんがさかなクンを車に乗せてパッカー車をずっと追いかけたことがあるという。お母さんはさかなクンが熱中することを止めたりせず、いつも手助けしていたのだ。
自発的な熱中体験は、それに飽きてしまっても親がいらつくこともなく、子どもの生きる意欲や力を育むが、親が無理強いすると子どもが意欲を失ったり、約束を破ったときに親は許せなくなる。
親はそれまで子どもにつぎ込んだ労力やおカネを取り返したいと思うので、いくら子どもがやる気がなくても潔く撤退できないのだ。そのまま、子どもをしかりつけながらズルズルと続けると、大切な関係が傷つく。
無理な天才キッズ教育はリスクがあることを知ってもらいたい。
そして、これは、スポーツや習い事のことだけではない。医者にしたい、弁護士にしたい、いい大学に行かせたい、いい中学に行かせたい、などということで親がレールを敷くときにも、同じリスクがあるのだ。
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