第43回
「植物繊維」が金属並み強度のスーパー素材に変身!
地球環境問題評論家 船瀬 俊介氏
2007年5月18日
木材や雑草が、金属並みの強度になり、建築、クルマ、家電製品などの原材料に!
夢のような話だ。日本は面積の68%が森という森林王国。しかし、山々には見捨てられたスギ、ヒノキなどがひしめき、間伐もされず朽ち果てようとしている。その無尽蔵の木材がビルや自動車、冷蔵庫などの材料となる。石油系プラスチック、金属材料の代替素材として実用化が目前だ。石油化学製品や鉄、コンクリートなどに頼ってきた戦後巨大産業は、その根底から一大シフトするだろう。いわゆるバイオ産業革命だ。
その夢の植物素材が“バイオ・ナノ・ファイバー”(BNF)。
快挙は2006年。開発したのが京大の矢野浩之教授。可能にしたのがナノテクノロジー(超微細技術)だ。「植物は、すべて細胞で出来ています。樹木だけでなくタンポポでも同じ。植物細胞はすべてがセルロースという高分子が骨格物質となっています」(矢野教授)。1本のセルロース繊維も、じつはミクロのセルロース結晶の“束”で出来ている。
髪の毛1万分の1で鉄の5倍強度
「高分子がピーンと伸びた状態で36本ほどが6×6で結晶を作っています。『延切鎖結晶』と呼ばれ横断面は幅四nm(n、ナノ:10億分の1)。極超ミクロ繊維は鋼鉄の約5倍の引っ張り強度。弾性率は鋼鉄の3分の2。力を加えたとき延びにくい。強さは防弾チョッキに使用されるアラミド繊維と同じです」(矢野教授)。
ナノファイバーは全植物細胞の基本骨格。6×6結晶は髪の毛のさらに1万分の1。「わたしたちは、チリ紙でも割りばしでもグシャと丸めたり折ったりしています。だから植物が強いという意識はない。ところが世界で一番大きな生き物は植物。100mの高さの巨体を重力に逆らって支える。細胞を形づくる“骨格物質”がとっても強固なナノファイバーだからできる。そこで、工業的に使えるものを取り出し、バインダー(つなぎ剤)やプラスチックと複合してFRP(繊維強化プラスチック)のようなものを作るのです」(矢野教授)。
バイオプラスチックは世界各国で開発競争が盛ん。しかし、金属並み強度は矢野教授チームが唯一、実現した。これぞノーベル賞並みの発明だ。
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