第39回
「納豆で砂漠を緑化」の壮大ロマン
地球環境問題評論家 船瀬 俊介氏
2007年2月1日
日本人の食卓でおなじみの納豆。それで、砂漠を緑化し地球温暖化を防ごう!という遠大なロマンを抱いている学者がいる。とてもじゃないが、あの糸引き納豆と砂漠化とは結び付かない。奇想天外、驚天動地。しかし夢物語ではない。科学的裏付けのある素敵なドリームだ。学者はこうでなくっちゃいけない。
九州大学農学部、原敏夫助教授――。彼はプラスチックの代用に納豆の糸を利用するという。名付けて納豆樹脂。そのポリマーは自重の約5000倍もの水を吸う。
写真A ビーカーの手前にあるのは乾燥状態の納豆樹脂。それをビーカーに入れて水を加えると樹脂ポリマーは吸水して、ゼリー状に膨れ上がる(九大HP『九大広報』No.2より)。
そこで、納豆樹脂ポリマーで紙オムツをつくり、その使用済みオムツを砂漠に埋設して、大地に保水性を与え、砂漠を緑の沃野に変える……。発想はまさにユニークの極み。
粘り強く納豆研究にのめりこむ
そもそも原助教授と納豆との出会いは……?
1979年、まだ助手の頃。オーストリア・インスブルク大学からの研修生を預かった。青い目の彼は「ナットーを研究したいデース!」と目を輝かせる。日本人にはありきたりの食べ物。しかし若き留学生には、まさにミステリアスな食材に見えたことだろう。わたしの米国の旧友は日本語ペラペラの親日家だが、その彼ですら「納豆は、全然ダメ…」と首を振る。彼らの目には日本人が“腐った豆”を食っているとしか映らない。
しかし、原助教授にとって長い学究生活で、何が幸いするか分からない。それまで納豆など、全く関心すらなかった若き指導教官も、我然このネバネバ物体に目覚める。研修生は聞く。「ナットーの糸は何で出来ているのデスカ?」。じつは60年代、日本でその成分は解明されていた。それはポリグルタミン酸(PGA)と呼ばれる高分子(学名:ポリガンマー・グルタミンアシド)。しかし日本語論文でしか発表されていなかった。「納豆を国際化したい」。
原氏はさらにのめりこむ。納豆糸の構造解明。さらにナットウキナーゼなど酵素研究。熱意はルーツ解明にまで及ぶ。「照葉樹林文化圏というのが東南アジアにあり、納豆の“家系図”もそれに重なり必ず中国の雲南に行き当たるはず…」。夢はアジア大陸にまで飛躍。中国、タイ、ネパールなど納豆の糸をつくる遺伝子“家系図”を大型コンピューターで解析するなど没頭した。
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