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有人走行テストに30億円必要

 では、産業界はどうか?

 「民間は景気もよくなかったし、関心を持ってくれた自動車会社にも『ちょっとトレインはねえ』といわれました。その会社は様子をみて少しは援助してくれていますけれども」と消極的な態度に小濱教授は残念がる。どうやら日本の企業はなかなか新しいことをやりたがらないようだ。小濱教授の話が続く。

 「我々は宮崎県日向市のリニア実験線の跡地で実験を行っています。今2km区間を改造して使用中です。7km全部使えるようになると時速350kmまで出せて有人走行ができる。それを、なんとか実証したい。それには30億円かかります」

 現在の模型(写真)デザインは小濱教授らが描き、製作は東北の地元企業が手がけた。

 「文部科学省がわれわれの管轄。同省には『30億円という予算は1省庁の力を越え、国家プロジェクトにならざるをえない。民間も巻き込んだ形で検討するしかない』といわれています」

 どうやら国も積極性には乏しいようだ。

EVの天才、清水教授は2年後輩

 取材過程で、驚くべきことを知った。時速370kmという超弩級スーバーEV(電気自動車)―第2回「「スーパー電気自動車」が温暖化を防ぎ、日本経済を救う」参照―の開発で注目されている慶応大学・清水浩教授と小濱教授は旧知の中ということだった。

 「清水浩さんは私の2年後輩。親しくつき合わさせてもらってます。高校時代もおなじ自動車部だったくらいです」。2人とも同じ科学少年時代の夢を追いかけているのだ。

 さて、電気自動車の普及も世界2位のトヨタ自動車が手をあげれば加速度的に進むだろう。しかし、そうならないのはなぜか。

 それはトヨタが一気に電気自動車にシフトすれば「会社が存亡の危機に陥る」というジレンマがあるからだ。

 電気自動車はガソリン車よりも部品が60%くらいで済む。するとトヨタ系列の下請け部品メーカーがバタバタ倒産する可能性がある。また、エンジン技術を持つ傘下の企業に「ガソリンエンジンは要らない」とは口が裂けても言えないだろう。

 つまり、地球の存亡より、企業の存亡が優先されているわけだ。

 「清水先生があちこち駆け回っても相手にされなかったのは、わかることです。しかし、それでもあきらめないで『俺がやってやる』とやった彼もすごい。結果的に30年も一貫してやっているわけですからね」

 こうした背景を理解している小濱教授は友人でもある清水浩教授について同情の念と執念への賛辞を隠さない。

 では、小濱教授は清水教授のように20~30社ほどの企業コンソーシアム(協同体を)設立することはないのだろうか。

 「できるといいですね。清水先生は足で集めた。彼の情熱はすごいと思う。」

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