都市と緑の共生の「究極」、E・アンバース
石井氏の設計思想をさらに発展させて、究極のエコ・ビルを実現した建築家がいる。1943年、アルゼンチン生まれのエミリオ・アンバースである。
私は12年前、拙著『地球にやさしく生きる方法』(三一新書)で、初めて屋上緑化に触れて、こんな文章を書いた。
「――食料を自給し、生活排水も自分で浄化してしまい循環再利用する。生ゴミも土に返し、これらをまた作物の栄養源とする。つまりビル全体が一つの生態系(エコ・システム)を形づくる。このビルは、夏涼しく、冬暖かい。冷暖房エネルギーはほとんどいらない。究極のエコ・ビル。階段状のベランダスタイルにすれば、遠くから見たらこんもりとした森にしかみえないだろう。“森”ビルと命名するゆえんである」
この夢想ともいえる“森”ビルを私はある建築専門誌で見つけて、仰天し、唖然とした。そして、何ともいえずうれしかった。なんだ、世界にはちゃんと同じことを考えている人がいたんだな。それがアンバースとの出合いだった。
その作品集『1993建築+デザイン展 目録』(東日本鉄道文化財団発行)は、都市緑化を志す建築家には必読文献だろう。そこで「人」と「自然」がお互い、切り結び合い、共生融和する建築と都市デザインが提案されている。
2001年6月中旬に撮影したアクロス福岡南側外観。緑の量が次第に増え、山のような印象だ
東南側から見たアクロス福岡の全景。南面以外はガラスカーテンウォールで覆われている
アンバースの代表作品が公民複合施設「アクロス福岡」(福岡市・天神)である。階段状のビル斜面には自然な樹木が繁茂し、まさに森にしか見えない。しかし、それは福岡の繁華街に出現した“森”すなわち壮大なエコ・ビルなのだ。これほど巨大な屋上緑化例は世界でも例がなく、国際的な建築デザイン賞も受賞した。まさに「自然」と「建築」融合は屋上緑化からだ。その第一歩が始まった。
地球温暖化にともなうヒートアイランド現象で都市自身が、灼熱の中に自滅しようとしている中、緑化こそ、建物、都市、国家、そして地球を救う唯一の道なのだ。都市と緑の「共生」の具体的イメージを提案する奇才E・アンバースに学ぶ点は多い。
■問い合わせ:
石井修氏(美建・設計事務所) TEL 06-6458-3652
東日本鉄道文化財団 TEL 03-5334-0623
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