暮らしに潜むリスク

合法的に親のスネをかじる方法

 財務状態が極度に悪化した場合、資本注入をして体力をつけた方がよいのは、企業も家計も同じである。

 そこで、金銭的に余裕のあるご両親がいる場合、資金援助をお願いしてはどうだろうか? 実は世の中には「相続時精算課税制度」という“合法的なスネかじり制度”がある。これは親世代の資産を、子世代にスムーズに渡すための制度で、年令など一定の条件をクリアすれば選べる贈与税の納税方法だ。

 本来、生前に親から贈与されたら、その額に応じた贈与税を支払う必要がある。だが、上記の制度には2500万円の特別控除額が設定されており、贈与額がこれ以下であれば、贈与税をその時点で支払う必要がなくなる。

 相続時には、相続額と上記の贈与額とを加算して相続税額を算出し、精算する必要がある。だが、そもそも日本では、相続税を支払う家庭は5%程度だといわれている。つまり、すべての相続人の課税額の合計(ここには上記の贈与額を含める)が、基礎控除額(5000万円+法定相続人×1000万円)以下である場合が多く、この場合、納税は不要となる。

 こうした条件に合う人であれば、親が生きている間に、実質的に2500万円まで、非課税でお金を受け取る(贈与を受ける)ことができるということだ(住宅取得資金の場合は多少ルールが変わる)。

 1500兆円といわれる日本の金融資産の半分以上は60代以上の親世代が持っている。今、お金が必要な現役世代としては、相続時にもらうより、必要な時にもらえる方がずっとありがたい。

 だが、「そんな、いい年をして親にねだるなんて‥‥」と、二の足を踏む方も多いだろう。実は家計見直しの際、つまずきやすいのがこのメンタルな部分だ。特にご主人の心理的葛藤は大きい。「ローンが払えない」と銀行と交渉するなんて、車庫から車がなくなれば近所にどう思われるか、年老いた親に資金援助してもらうなんて‥‥という具合に、抵抗を感じてしまうのだ。

 たしかにご主人の気持ちは分からないでもないが、「今は100年に1度といわれる有事なのだから仕方がない。運が悪かったのだ」と、割り切ってもらうしかない。必要以上の男のプライドは、この際さっぱり捨ててしまおう。キビシイ現実を直視できず、事態がずるずる悪化することだけは避けたいものだ。

 家計は経済の重要な主役の一つである。そして、豊かに慣れた右肩上がりの時代と、低成長の不確実な時代の家計モデルはまったく違う。

 これからの家計は、固定費をなるべく減らし、世帯の合計収入を増やし、リスク吸収できる幅を大きくしておく必要がある。リスクとは「危険」だけではなく、「ブレ幅」という意味もあるのだ。どのような状況になってもしなやかに対応できるよう、フレキシブルで筋肉質な家計を目指したい。

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