暮らしに潜むリスク

第28回
ミセス・ワタナベの「FX狂騒曲」

ファイナンシャルプランナー 鈴木暁子氏
2008年3月18日

 「主婦、FXで1億4000万円の脱税!」。昨春センセーショナルな見出しがニュースや新聞をにぎわした。それを知って、まず耳を疑い、次に「とんでもない奴だ!」という怒りより、(不謹慎かもしれないが)「すごい!」という、感心とも羨望(せんぼう)ともいえるような気持ちを持った人も少なくなかったと聞く。

 ところで、「ミセス・ワタナベ」という名前をご存知だろうか。脱税した主婦のことではない。日本の一般主婦投資家の総称である。

 なぜ“ワタナベ”なのかは定かではないが、この事件以来、主婦投資家を中心に、FXは絶大な注目を浴びる商品となり、着実に伸びていった。その資金残高は、外国為替市場に影響を及ぼすほどとなったのだ。そして、このような投資家たちを「ミセス・ワタナベ」と称して、フィナンシャル・タイムズ紙など名だたる海外紙にまで取り上げられたのである。

※ FX:Foreign Exchangeの略。外国為替証拠金取引または外国為替保証金取引

 本来、外国為替取引は、外国為替公認銀行経由でのみ許された取引であった。「ちょっとのすきに大損するかもと、トイレに行くのも怖かった」。外資系銀行の女性ディーラーとして、張りつめた空気に怒号が飛び交うディーリングルームに従事した先輩は言う。

 しかし1998年、「外国為替及び外国貿易管理法(いわゆる外為法)」の改正により、個人投資家にも解禁となった。その結果、今ではサラリーマンでも主婦でも、パソコンさえあれば、みなディーラーになれてしまう。

 プロに「トイレに行くのも怖い」と言わしめる取引に、扱う規模は小さいとはいえ、主婦投資家がこれほど参入している。FXはそれほどおいしいのか? そこに危険はないのか?

 チャイナショック ―― サブプライム問題で大きく変化した投資環境に向き合うと、「これが常識」と思っていたことが、実はそうではなくなってきたことに気づく。

 
 

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。