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「場当たり個人情報」から「攻めの情報活用」へ

第23回
匿名を隠れ蓑にした「ネット中傷」という横暴

ネット情報セキュリティ研究会会長 田淵 義朗氏
2009年4月9日

 ネット中傷、脅迫が後を絶たない。警察に寄せられる相談件数は、昨年、過去最高に達した。ネットの世界では、匿名者が強く実名の個人や会社の立場は弱い。明らかに違法な書き込みにも、被害者の側に精神的、金銭的負担が重くのしかかる。

ネット中傷・脅迫、過去最多、昨年の相談受理、1万件超す――警察庁発表

 2008年に全国の警察が受理したインターネット上の名誉棄損や中傷、脅迫に関する相談は前年比30%増で、初めて1万件を超えた。名誉棄損と脅迫事件の検挙も25%増の計173件で、いずれも統計の残る2000年以降最多となった。ネット関連の相談件数が全体で12%増の8万件余り、このうち「詐欺、悪質商法」が15%増の3万8000件弱で最多を占め、「迷惑メール」は30%増の6000件余り、「不正アクセス、ウイルス」は51%増の4500件強で、「ネットオークション」は29%減の9000件弱だった。いずれも2000年以降増減を繰り返しているが、「名誉棄損、中傷、脅迫」は一貫して増えている。(時事通信2/26)

 この記事で注意が必要なのは、相談件数1万件以上に対して、検挙数が173件と非常に低いことだ。名誉棄損が親告罪であること、相談だけで被害届を出さないケースが多いことを割り引いても、数字が極めて低いのである。検察庁が起訴する割合に至っては、さらに低い数字になるはずだ。

 ここから分かるのは、ネット中傷に対して警察はなかなか動かないという事実である。ネットでの殺人予告などで即座に動いて、犯人を逮捕するのと大きな違いである。実際過去に依頼を受けて NIS が取り組んだネット中傷事件でも、警察に被害届が受理されるまで半年、検察庁の起訴までに1年以上の時間がかかっている。

ネット世界の暴力に対し、刑事責任を追及する動き

 お笑いタレントのスマイリーキクチさん(37)が開設したブログに誹謗中傷が殺到した事件で、警視庁は27日、スマイリーキクチさんが殺人事件の犯人だとする事実無根の書き込みをしたとして、大阪府高槻市の大学職員(45)ら4人を名誉棄損容疑で、危害を加えることをほのめかしたとして2人を脅迫容疑で東京地検に書類送検した。
 脅迫容疑の2人は、昨年4月に第三者が悪意の書き込みを閲覧できなくなってからも、本人を脅す投稿をした点が立件対象とされた。「ブログ炎上」を巡って投稿者が集団立件されるのは初。匿名で自由な書き込みができることに乗じて「表現の自由」を逸脱するネット暴力に対し、大きな警鐘になるとみられる。(読売3/27)

 この事件が注目を集めたのは、ネット中傷、脅迫をした7人が一度に立件されたことである(当初20人弱が捜査対象になったが、ブログの閲覧制限期間中の投稿者を除外したため書類送検の対象者が減少した)。匿名で自由な書き込みができる点を悪用し「表現の自由」を逸脱するネット暴力に対し、大きな警鐘となった。

 この事件では2年前のブログ炎上が話題になっているが、実はそれ以前の2000年から匿名掲示板2ちゃんねるで、被害者は10年近くに及ぶ執拗な誹謗中傷にさらされてきた。警察としてはこうした経緯も踏まえ、一罰百戒の意味も込めて捜査をしたと考えられる。

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