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「場当たり個人情報」から「攻めの情報活用」へ

第11回
子供を守ることを妨げる個人情報保護を考え直そう
~個人情報保護の盲点と法改正に向けた今後の課題~

ネット情報セキュリティ研究会会長 田淵 義朗氏
2006年2月10日

個人情報VS不審者情報

 昨年末の連載10回目「“公益性”に基づいた個人情報の活用を考えよう~小学生殺人事件を教訓に“子供の命を守る”個人情報活用を~」において、子供の安全を守るために個人情報の活用の仕方を考えようと書いた。

 詳しくはそちらを読んでほしいのだが、今年2月5日に読売新聞がネットで報じた「個人情報VS不審者情報」という記事は、個人情報保護法の問題点をよくあぶり出している。読売新聞は、いままでも個人情報の問題について積極的に報道しており評価できる。

 筆者はこの短い記事に何点か重要な論点が含まれていると思うので、事前に断った上で全文をここに転載したいと思う。記事の内容は次のようなものである。

 「子供を狙った犯罪の多発を受け、横浜市が検討している不審者情報などのメール配信システムが、個人情報の扱いを巡って導入できないでいる。メールアドレスなど個人情報を扱う事務の外部委託を制限する市の条例があるためで、業を煮やした一部の学校では、PTAが業者と契約する形にして独自に実施に踏み切るところも出てきた。」

 要旨はこの通りだが、これだけ読んで、まず普通の方は、どうして?と思うだろう。メールアドレスが個人情報に該当するという点、そして個人情報の外部委託を制限する市の条例の存在、である。記事は続く。

 「同市教委では昨年初め、市内の小学校から相談を受け、事前に登録した保護者や地域住民にメールで不審者情報などを配信するシステムの検討を始めた。しかし、市立小中学校は計約500校あり、市が運営すると、膨大な数のメールアドレスを管理しなければならず、コストがかさむうえ、地域ごとのきめ細かい情報提供も難しいことが判明。民間企業にアドレス管理を委託する形での導入を考えた。」

 どうやら、膨大な量の個人情報を市で管理・運用するのでは費用対効果の点からいって難しいから民間に委託することにしたが、そこで問題が発生したのである。

 「同市では、市個人情報保護条例により個人情報の管理を外部委託する際には、市個人情報保護審議会に諮る必要がある。ところが、条例を所管する市民情報課は『外部委託に慎重な委員を説得するには、委託が不可欠と証明する必要がある。予算的な理由だけでは難しい』との見解を示し、市教委は諮問を断念した。」

 市の個人情報保護審議会の存在、そして委託が不可欠だと委員に説明し、理解を得られそうにないので諮る前に断念したと記事は報じている。要は「あきらめた」のであるが、あきらめざるを得なかったのはなぜか。

 「こういった動きに、一部の学校は、PTAがアドレス管理する業者と契約する形にして条例の適用外になるようにし、管理の委託を始めた。ただ、PTA関係者からは『情報漏れなどが起きた場合、責任が問われるのでは』と心配する声が出ている。」

 業を煮やした一部学校の親(PTA)が条例の適用を免れるため自らが契約の主体となって、民間業者と直接契約することを始めた、というのである。なぜこんなことまでしなければならないのか疑問である。そして筆者が最も大きな問題だと思うのは、個人情報が漏えいした場合に責任が問われるのではと心配する声が出ている、と報じている点である。

 
 

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