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「場当たり個人情報」から「攻めの情報活用」へ

第5回
「アイコラ」などの不適切な情報は、なぜ削除されないか
~動かないプロバイダ~

今回は、掲示板に書き込まれた個人情報の不正を発見して、それを第三者が告発した場合、現行の法制度でプロバイダはどういう対応がとれるのか、また対応の限界について、法の視点を交えて考察する。

ネット情報セキュリティ研究会会長 田淵 義朗氏
2005年9月5日

 あるISP(インターネット・サービス・プロバイダ)担当者から、われわれNIS研に以下のような相談があった。

 私は○○○というISPの会社に勤務している○○です。今日は相談があってメールしました。

 実は弊社の会員サイトに、有名芸能人の画像が掲載されたWebページがあるのですが、これを見た第三者から「この写真は、無断で掲載されているんじゃないか」と告発が寄せられました。

 一見して許可を得ていない違法なWebサイトのように見えるのですが、担当者としてどう対応すればよいのか、法的側面からご教授ください。

 最近多発するネット上の個人情報(著作権侵害行為)に対し、私どもISPの現場では,対応に苦慮するケースが多発しています。よろしくお願いします。(某ISP担当者 30歳代)

 ある有名人のファンが、たまたま画像が不正使用されているWebサイトを発見し、告発してきたケースだ。問題は「第三者からの告発」に対して、プロバイダ側が削除できるのか、という点である。

 Webサイト上の書込みは膨大であり、特定個人に許可なく勝手に掲載された個人情報の類は山ほどある。本人が知れば「削除してほしい」と要求するものも少なくない。誰が見ても、一見して許可なく不正に使用されているのではないかと思われるネット上の書込みは、実は非常に多いのが現実だ。そして、親切にプロバイダに情報を寄せた善意の第三者は、これからのネット時代には欠かせない人たちであろう。

 しかしながら現在、それを支える法律とその運用解釈にあいまいな点が多いため、現場のプロバイダではすぐに対応できないのが実情だ。

削除できる「相当な理由」とは何か

 こうした「善意の第三者による不正に使用された個人情報の告発(このケースは有名芸能人の著作権侵害告発)」に対して、プロバイダはいかなる対応が可能なのか。

 前回の記事で書いたように、こうしたケースに対応する法律として「プロバイダ責任制限法」がある。

 その第3条2項1号にある「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」は、一定の手続きに従い、掲載情報を削除できるとされている。

 それでは「相当の理由」とは何なのか? 同法では「相当の理由」があると判断し、削除したプロバイダ側は、情報を書き込んだ一方の当事者から「損害賠償請求を問われることはない」と規定している。

 その背景には、電気通信事業者が守るべき「通信の秘密」の義務が大きく影響を及ぼしている。つまり、書き込みに対しては勝手に削除できないのである。勝手に削除すると、プロバイダ側は書き込んだ当事者から訴えられるリスクを負うことになる。その免責が「相当の理由」になる。

 しかし、この「相当の理由がある場合」というのが全くもって、グレーゾーンとなり、プロバイダに判断を迷わせている事実がある。

 なぜなら、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会などが「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プロバイダ関係ガイドライン」を出しているが、このガイドラインに記載のない現象が多いという現実があるからだ。

 そのためプロバイダの現場で難しい判断を迫られ、窮して顧問弁護士などに相談するが、この分野に明るい法律家も少ない上に、研究している法律家の中でも意見が分かれており、その見解に混乱や誤解が生じている現状がある。

 NIS研に登録している弁護士の中でも、意見は分かれている。いろいろな意見があるが、あくまで現行の法律を前提とした解釈で、基本的な論点を以下に整理しておく。法律家の解釈はこのようなものであるが、読者の皆さんのご意見をいただければ幸いだ。なお、難しい法律用語は平易な文体に書き改めた。

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