第67回:大水害が「もし」起きたら――
東京の「地下鉄水没シミュレーション」
建築&住宅ジャーナリスト 細野透氏
2009年4月30日
最悪のシミュレーション結果を、ここで再現してみる
今回は、ちょっと趣向を変えて、中央防災会議が検討した、水害時の東京の地下鉄の被害状況を、ここで再現してみよう。
――3日間の総雨量がなんと550ミリにも達し、「200年に1度の大雨」と報じられたその日。荒川右岸を支える堤防が、午前0時ころ、あっけなく決壊した。現場は、河口から21キロさかのぼった、東京都北区志茂である。これが、東京を走る地下鉄など17路線、81駅の「大水没」の幕開けとなった。
それは、以上のような想定状況から始まる。
堤防が崩れてから11分後。氾濫した水は、決壊個所から約700メートル離れた、東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅に到達した。駅所在地の標高は2.5メートルあり、地上出入り口には高さ1メートルの止水板を設置してあったのだが、濁流は止水板をやすやすと乗り越える。
地下へと通じる階段を一気に下り落ち、標高マイナス15メートルの線路面に到達。トンネルに沿って次の志茂駅に向かって激しい勢いで流れ始めた。
南北線は赤羽岩淵駅、志茂駅、王子神谷駅、王子駅、西ヶ原駅と続く。志茂駅(標高2メートル、線路面マイナス15メートル)では、0時26分に、地上から氾濫水が流入し、地下に到達して、赤羽岩淵駅からの流れと合流し勢いを増した。
次の王子神谷駅(標高2.5メートル)、王子駅(標高5メートル)でも、ほぼ同じ現象が起こった。しかし、その先の西ヶ原駅は、線路面の標高が9メートルと高かった。このため、濁流の流れは、駅の手前でかろうじてせき止められた。
駅に関しては、改札階があるフロアの天井が水につかると「水没」と判断し、線路に関してはトンネル内に水が満ちると水没とする。最初の赤羽岩淵駅から、5番目の西ヶ原駅まで約5キロ強。そのうち200メートル程度を残した区間が、3時間足らずでほぼ水没してしまった。水没を免れたのは、わずかに西ヶ原駅だけである。
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