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震度7の建築経済学

焼死者9900人、ただし火災旋風は想定外

 表4に「上町断層帯地震の火災による死者数(風速15m/s)」を示した。

表4 上町断層帯地震の火災による死者数(風速15m/s)

焼失棟数 焼死者 平均死者数a
冬05時発生 約30万棟 約7500人 0.0250
秋08時発生 約26万棟 約5600人 0.0215
冬12時発生 約39万棟 約9900人 0.0254
冬18時発生 約37万棟 約8500人 0.0230

 被害が最大になるのは冬12時発生の場合で、焼失約39万棟に対して焼死者9900人に達する。「1棟当たりの平均死者数a」は幸いにも0.0254にとどまっている。

表5 上町断層帯地震の火災による死傷者数(風速15m/s)

焼死者 重症者 負傷者
冬05時発生 約7500人 約7900人 約2万8000人
秋08時発生 約5600人 約5600人 約2万0000人
冬12時発生 約9900人 約1万人 約3万7000人
冬18時発生 約8500人 約9000人 約3万2000人

 表5に「死者、重症者、負傷者」の全体を示した。冬12時発生の場合に焼死者9900人に対して、重症者は1万人、負傷者は3万7000人を数える。

 上町断層帯地震では揺れによる死者が約1万5000人~約3万4000人であるのに、火災による死者は約5600人~約9900人にとどまった。その第1の理由は、震度6強と震度7のエリアに、木造建物がびっしりと密集していて、またたく間になぎ倒されてしまったことだ。

 第2の理由は、「避難渋滞」と「火災旋風」が考慮されていないためだ。

 建物が密集した地域で火災が発生すると、避難のために街路に集中した群集の歩行スピードが遅くなるため、風速が一定以上になった場合には急激に死者数が増大する可能性がある。これが「避難渋滞」である。

 「火災旋風」は関東大震災(1923年)に東京の本所区・陸軍被服廠(ひふくしょう)跡で発生した。現在の墨田区横網町公園付近である。約10万平方メートルを超える空き地が、4万人以上の避難者と家財道具で一杯になったころ、周囲から火の粉が降り注ぎ、衣服や荷物に引火した。猛火によって生じた上昇気流がすさまじい火災旋風になり、焼死者4万人以上という大惨劇が起こった。

表6 関東大震災(1923年)の火災による被害

焼失棟数 焼死者数
麹町 6,484 16
神田 27,623 801
日本橋 21,616 229
京橋 29,290 254
15,837 115
麻布 2,099 0
赤坂 99 15
四谷 789 1
牛込 0 0
小石川 985 2
本郷 6,818 34
下谷 33,497 166
浅草 59,192 1,974
深川 40,743 1,586
本所 54,781 46,985
東京15区 299,853 52,178

 表6は「関東大震災の火災による被害」である。46時間で29万9853棟を焼失し、5万2178人が焼死した。表の末尾にある本所区では焼失5万4781棟に対し、実に焼死者4万6985人を記録している。これは、主に被服廠跡の火災旋風による異常値で、「死者方程式」ではとらえきれない。したがって、今回の被害想定では想定外とされた。

 いざ、上町断層帯地震が発生したとき、「避難渋滞」と「火災旋風」が起こらないことを祈るばかりだ。

(注)掲載した図および表は、特に明記のない限り、中央防災会議が公表した資料である。

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