第32回
大阪・上町断層帯地震の「死者方程式」
建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏
2007年12月26日
大地震が発生し、火災が起これば多数の死傷者が出る。その被害想定がどのように行われるのかを説明しよう。
地震による直接の死因は、建物の倒壊、家具などの移動・転倒、斜面の崩壊、周辺物(ブロック塀、自販機など)の倒壊・転倒、屋外落下物の発生、地震による火災などに分類される。死者数を推定するに際しては、過去の地震や火災被害のデータを参考にして、死因ごとに一種の「死者方程式」をつくり、それを根拠に数をはじきだしていく。
わたしは建築&住宅ジャーナリストとして、地震に関する記事を取材・執筆する機会が多い。しかしながら、死者方程式について書かなければならなくなると、いつも気が重くなってきて、胃もジワリと痛んでくる。
前回(第31回)は、国の中央防災会議が公表した資料をもとに、大阪を痛撃する上町断層地震が建物にどんな被害をもたらすかを述べた。今回は上町断層地震による死傷者について説明する。
さて、建物の倒壊による死者に関しては、関東南部大地震の69年周期説で知られる、河角廣博士がつくった「死者方程式」がある。河角式を簡略化すると次式になる。
(1)「死者数」=「全壊棟数」×「1棟当たり平均死者数a」
「死者数」は当然ながら建物の「全壊棟数」に比例する。これに対して、「1棟当たりの平均死者数a」は地震の規模、発生時間、居住者の年齢などによって大きく異なる。
図1 木造建物全壊棟数と死者数
図1に「木造建物全壊棟数と死者数」(資料、東京都)の関係を示した。中央防災会議はこの図にもとづいて、「1棟当たりの平均死者数a」は木造建物で0.0676としている。すなわち、全壊100棟で死者6.76人、ということになる。
非木造建物では「a」は0.0084になる。全壊100棟だと死者は0.84人だ。耐震性の強い非木造建物だと、死者の数がひと桁少なくて済む。
表1 上町断層帯地震の揺れによる死者数
| 全壊(揺れ) | 死者(揺れ) | 平均死者数a | |
| 冬05時発生 | 約56万棟 | 約3万4000人 | 0.0607 |
| 秋08時発生 | 約56万棟 | 約2万4000人 | 0.0429 |
| 冬12時発生 | 約56万棟 | 約1万5000人 | 0.0268 |
| 冬18時発生 | 約56万棟 | 約2万3000人 | 0.0411 |
(風速03m/s、15m/s)
(aは1棟当たり平均死者数)
表1に「上町断層帯地震の揺れによる死者数」を示した。揺れによる全壊棟数が56万棟であるのに、発生時間によって死者数が異なるのは、滞留先(自宅、会社、外出先のどこにいるのか)の違いによるものだ。「1棟当たりの平均死者数a」は、最大0.0607から最小0.0268までと幅がある。
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