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震度7の建築経済学

避難階段の数を増やし幅を広げる

 ワールドトレードセンターの崩壊事故にしても、長周期地震波によるダメージにしても、危険性が指摘された以上はもう「想定外」ではない。建築学会は、高層建物からの全館避難を可能にするために、次のような対策が必要だと主張した。第1に、安全かつ十分な避難経路の確保。第2に、在館者への避難情報と安心情報の発信。第3に、避難シナリオに沿ったマニュアルの整備。

 この中で最も大変なのが避難経路の確保だ。平たく言えば、各部屋から避難階段まで通じる廊下の距離を短くし、避難階段の数を増やしたり幅を広げたりすること。せめて、欧米先進国のレベルに追いつかなければならない。そして、障害者、高齢者、幼児が利用できるエレベータも備えたい。

 技術的には解決可能だが、問題はコストにある。廊下や階段の容量を増やすことは、逆から見ると、オフィススペースや住居スペースを減らして事業の採算性を悪化させることにつながる。「震度7の建築経済学」では、安全とコストのバランスが常にやっかいだ。

 さて、超高層ビルの避難階段を急いで下りてみたことがあるだろうか。スニーカー履き、手荷物なしの身軽な格好だと、最初は1階当たり10秒もかからない。しかし、下りるにつれて15秒、20秒とペースダウン。40階のオフィスビルだと早い人でも10分、遅い人では20分以上かかると推定される。

 ただし、これは階段が混み合っていないときだ。全館で一斉避難する場合には、それよりはるかに時間がかかる。ワールドトレードセンターがテロで崩壊したときには、下層階で人が渋滞したため、1階下りるのに2分程度かかったといわれる。

 全館一斉避難という極限状態のイメージを社会が広く共有し、「避難経路の確保が重要」だと納得したときに、始めてコストの壁を越えることが可能になる。はたして、海溝型巨大地震はそれまで待ってくれるだろうか。

(参考文献1)「巨大地震による長周期地震動の予測と既存建築物の耐震性と今後の課題、243p~246p」(日本建築学会・東海地震等巨大災害への対応特別調査委員会、2006年9月)」

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