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震度7の建築経済学

第13回
「超高層からの全館避難」は想定外でいいのか

建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏
2007年4月4日

 3月25日に発生した能登半島地震で、震源から約330キロ離れた東京でも、長周期地震波が4分以上観測されていたことが分かった。地震波などのデータは東京大学地震研究所のホームページで閲覧できる。

 能登半島地震で東京の超高層ビルが大きく揺れることはなかったが、もし激しい長周期地震波に襲われるとどんな事態になるのか。

 2006年11月に日本建築学会と土木学会が発表した、「海溝型巨大地震による長周期地震波に備えるべき」とする49項目からなる共同提言をもとにイメージしてみよう。その多くは建築・土木構造物の耐震性向上をアピールしたものだが、注目したいのは「避難計画」に関する3項目の提言が入っていたことだ。

 (提言1)高層建物からの「全館避難」を可能にする
 (提言2)「スーパー耐震エレベータ」を開発する
 (提言3)「ライフライン系」など設備機器の耐震性を向上させる

 今回は提言1について書きたい。とても意外なことだが、日本の超高層ビルは「全館避難」を想定しないつくりになっている。それでは、火災にはどう対処するのか‥‥。適切な防火区画と防災設備などにより、火災を限定されたエリアに閉じこめるので、「階避難」すれば安全が確保されると考える。

 階避難とは、火災階およびその上下の複数階にいた人が、避難階段などへ逃げ込むことをいう。実際に火災が発生した場合には、火災階より上階にいる人はすべて地上へ誘導されることが多い。しかし、設計の原則としては階避難であり、全館避難にはなっていない。

 例えば、10階建てのオフィスビルがあって、各階の床面積が3000平方メートル、働く人は各階250人、全体で2500人だとしよう。避難階段は2カ所にあり、階段の幅は1.8mだとする。

 次に、このビルがぐーんと高くなって、40階建てになったとしよう。全体では1万人が働くこの超高層ビルでも、建築基準法的には避難階段はやはり2カ所、階段の幅は1.8mのままでいいことになっている。直感的には不十分と感じるが、階避難の原則からはこれで十分という判断になるのだ。

 しかし、世の中には想定外の出来事が満ち満ちている。ニューヨークのワールドトレードセンター崩壊事故がそうだった。日本の超高層ビルで同じような事故が起こったら、少ない避難階段に人が殺到して身動きが取れなくなり、逃げ遅れて多数の死傷者が出てしまうのではないか。

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