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震度7の建築経済学

住宅メーカーのひたむきな「ボディー愛」

 住宅メーカーはなぜ「地震に強い住宅」にしゃかりきになり、マンションデベロッパーはしゃかりきにならないのか。ずーっと不思議に思っていたので、周りにいる専門家と何回か議論を重ねた。

 「プレハブ住宅は工場製品なので耐震性を向上させやすいが、マンションは一品生産なので向上させにくい‥‥」。デベロッパーが設計者、施工者に強く指示すれば、地震に強いマンションはつくれるはずなので、この意見だとどうも理屈が通りにくい。

 「住宅メーカーは製造と販売を兼ねる“製販一体”なので、購入者(ユーザー)のニーズを商品企画に反映させやすい。しかし、マンションは“製販分離”が多いので、ユーザーのニーズが企画に反映されにくい‥‥」。かなり説得力がある意見なのだが、姉歯事件でユーザーが地震に強いマンションの必要性を痛感しているのに、デベロッパーの腰がなぜ重いのかを説明しきれてはいない。

 「住宅メーカーでシェアトップを争っているのは大和ハウスと積水ハウス。ともに大阪に本社があり、阪神・淡路大震災の記憶が強く残っているために耐震性向上に熱心で、それが業界をリードした。一方、マンションデベロッパー大手のほとんどは東京に本社を置いているので、熱気が伝わりにくかった面がある‥‥」。確かに、その通りなのかもしれない。

 謎が解けたのは大和ハウスの記者発表に出席したときだった。新商品「xevo」の「x」は、耐力壁のブレース(すじかい)の形をイメージしたもの。つまり、構造体を商品名に採用してしまっていたのだ。

 「なぜ、そんなにしゃかりきになるのですか」。商品開発を担当した大和ハウス取締役の濱隆氏に質問した。「住宅メーカーが最もこだわらなくてはならないのは何と言っても構造なんですよ」。

 プレハブ住宅は構造体に内装材、外装材、設備機器などを取り付けて完成させる。プレハブ住宅のコアとなる構造体だけは、住宅メーカーが全力で取り組むしかない。それに対して、内装材、外装材、設備機器などに関しては、外部の専門メーカーの協力を得ればいい。

 これは、トヨタやホンダなどの自動車メーカーが、車体とエンジンだけは必ず自社で製造するのと似ている。メーカーである以上、構造体や車体などの「ボディー」づくりには徹底してこだわるしかないのだ。

 住宅メーカーが本気になってボディーを改良しようとするから、それに応じて耐震性もグングン向上したのだろう。地震に強い住宅にさせる原動力は、住宅メーカーのひたむきな「ボディー愛」だった。

 一方、マンションデベロッパーが行うのは「用地取得、商品企画、建設事業、販売」で、設計は設計事務所、施工はゼネコンに依頼するケースが大部分だ。すなわち、デベロッパーが直接、ボディーをつくることはない。関係が薄ければ、当然ながらボディー愛が生まれることはない。

 ボディー愛があるかないかで、住宅メーカーとマンションデベロッパーに大きな格差がついてしまい、姉歯事件を経てもその格差が縮まることはなかったのだ。

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