バックナンバー一覧▼

震度7の建築経済学

第2回
「破滅、壊滅、破局」から目を背けるな

建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏
2006年10月25日

あいまい定義の震度7

 気象庁は1996年に計測震度を導入することで「二つの失敗」を犯した。一つは前回説明したように、「対数を使ったために、物事を分かりにくくしたこと」。もう一つは、「震度7の定義をあいまいにして、破局的な状態から目を背けてしまったこと」だ。欧米で使われる「改正メルカリ震度」「MSK震度」と比較すると、二つ目の失敗がより明確になってくる。

 日本では気象庁の「計測震度」を使っているが、西欧と米国では「改正メルカリ震度」、東欧では「MSK 震度」が使われる。

 表に示したのはフリー百科事典「ウィキペディア」(英語版)が伝える改正メルカリ震度の解説だ。震度は I から XII までの12 階級に分かれているが、日本の計測震度でいう震度6弱・6強、震度7にほぼ相当する VIII 以下にはこんな解説が付いている。

 日本語で破壊、破滅、壊滅、超壊滅、破局という言葉を正確に使い分けるのは困難だが、計測震度に出てくる震度6弱・6強、震度7という単なる「記号」に比べて、終末の雰囲気が実感として伝わってくることは確かだ。

 もう一方の MSK 震度も改正メルカリ震度とほぼ似たシステムだが、その XI と XII はさらに過激だ。「破局的」で終わりではなく、その先になんと「きわめて破局的」が待ち受けているのだ。

 このように、改正メルカリ震度も MSK 震度も、ともに極限の状態である「破局的」、あるいは「きわめて破局的」な状態に思いを巡らせていることに特徴がある。

 それに対して、極限の状態を忘れているとしか思えないのが日本の計測震度だ。震度7の解説には、「耐震性の高い建物でも、傾いたり、大きく破壊するものがある」「大きな地割れ、地すべりや山崩れが発生し、地形が変わることもある」などと述べるにとどまる。破局の一歩手前の状態に軽く触れているだけで、その先に目を向けようとはしていない。つまりは、中途半端で終わっているのだ。

 米国や欧州にだけ破局的な地震が発生して、日本には発生しないというのだろうか。いや、そんなことがあるワケがない。地震国ニッポンなのだから、決して目を背けることなく、極限の状態をとことん見極めておく必要があるはずだ。

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。