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“江戸っ子”リスクマネジャーの「車座清談」

第18回
目立つな!“控えめな格好”で危機を回避し身を守れ!
~リスクマネジメントの原理・原則(6)~

コンサルタント 牛場 靖彦氏
2005年11月1日

食事は別々に、服装はみんなと同じに

 現在、100万人近い日本人が海外に住み、毎年1600万人前後の人たちが海外旅行に出かける。そして、海外で安全に暮らすための知恵や、トラブルなく出張や観光旅行ができる工夫が年々求められるようになってきている。 

 私も企業や団体、個人からの依頼で、海外安全対策のセミナーや社員教育研修などに呼ばれて話をすることがある。また『海外旅行トラブル解消本』(KKベストセラーズ「ワニ文庫」)や、『海外で安全に暮らす基礎知識』(ぴいぷる社)という本も出している。

 そこで、基本的な対策として私が主張するのは、「ハイ・プロファイル(目立つこと)を慎め、出来るだけロウ・プロファイル(控え目)に徹せよ」ということである。

 今回は、リスクマネジメントの原理・原則として、この「ロウ・プロファイル(控え目)に徹せよ」がどんなことか、お話しようと思う。

 派手な服装にする、高級車を乗り回す、他人の目の前で大金を見せびらかす、徒党を組んで高級品を買い漁る……これらは「ハイ・プロファイル」の典型だ。

 日本人は海外に行くと、気が大きくなるのか、いたるところでこうした「ハイ・プロファイル」な振る舞いが目立つ。こうした行動は決して褒められたものではない。

 西洋には、「食事は別々に、服装はみんなと同じに」という格言がある。

 「他人にはわからないから、自分の家の中では、どんなに贅沢な食事をしても構わない。でも外に出れば、派手な服装は、すぐにわかってしまうから他人と同じ地味な服装にするのが安全」というのが、この言葉の意味だ。

 一般に日本人は「大金持ち」と海外の人たちには見られている。派手なパーティーを大々的に開いたり、高級品をこれみよがしに身にまとう。その上、ゴルフ場で賭をして法外なキャッシュをやり取りしたり、車にふんぞりかえって座っているような輩も少なくない。だから、そうした大金持ちを狙おうとする人たちも増える。

 必要以上に神経質になることはないが、もう少し「ロウ・プロファイル」にした方がリスク管理上グッと安全の度合いが高まるし、はたから見ても人としての品があることも演出できる。

カネにものいわせる態度は危険を招くだけ

 以前、リスクマネジメントの世界大会でオーストラリアのブリスベンに行った時のこと。私は、帰国で夜中12時の飛行機に乗るためブリスベン空港に向かった。

 空港に着いたのは午後11時。こんな時間にもかかわらず、空港内の免税店は、とてもにぎわっていた。

 そこへ、30名ほどの日本人の団体客が怒涛のごとくなだれ込んできた。そして、客である1人の中年男性が、免税店の外国人の店員にがさつな言葉で話しかけた。

 「ようよう、ねえちゃん、それを出してくんねえか? ほれ、そのとなりの酒だよ!!」

 「Oh,you want to buy CAMUS?(「カミュー」をお求めですか)」

 「えッ、『紙』?。わかんないねえちゃんだな。いいか、オイラがほしいのは、ほれ、そこにある『カマスのペケ・マル』だよ。な、そいつを並びてあるだけ全部寄こせっていってるんだ!」

 と、まあ、はたで聞いていて、こちらが恥ずかしくなるような会話をしていた。

 「おい、お兄さん!買うならもっと普通にものをいえないのかい!しかも、カミューのXO(エックス・オー)のことを『カマスのペケ・マル』とは何をいってるんだ!!いいかい、ここはナ、魚屋じゃねぇんだぜ、このコンコンチキ野郎!!」

 たまりかねて、思わず彼やその仲間の客をこう一喝してしまった。なんせ、こちとら江戸っ子でござんすからねえ。彼の行動は日本人の面汚しだ。びっくりして目を丸くしていた。

 せっかくの海外旅行のお土産に普段はなかなか飲めない高級酒を免税店で買うことを私は否定するつもりはない。

 しかし、成金のごとく、カネの力にものをいわせるような態度は、海外での日本人のイメージを低下させるだけだ。また、そうした行動をもし犯罪者が見ていれば、そのターゲットとなる危険もある。

 
 

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