政治家や金融庁は「現場」から景気対策を打ち出しているか
昨今の景気動向を鑑みるに、A行の件は「氷山の一角」と考えるべきでしょう。A行と同様に苦しんでいる銀行は、まだまだたくさんあるはずです。そんな状況にある銀行が資金繰りに苦しむ中小企業への融資なんかするわけがないのは当然です。そして銀行から借金をせずに済む中小企業は稀なのですから、A行(および経営難に 陥っている銀行)の危機とは、そのまま中小企業の危機でもあることになる。こればかりは社内のコミュニケーションや活気などの「内的要因」だけで何とかできる問題ではありません。先に「深刻に考え込んでしまう」と書いたゆえんです。
いま我らが日本政府は、「あの」定額給付金などを始めとして様々な景気対策を採っています。無論、わたしはそれらの施策の善し悪しをとやかくいう立場にはありません。しかし少なくとも、政治家や金融庁エリートの皆さんは、こういう状況を承知の上で施策を打ち出しているのか、という疑問が払拭できないでいることは明記しておきたい。「真実は現場にしかない」とはわたしの口癖ですが、「A行の危機=A行と取引のある中小企業の危機」という現実現場を知らずして打ち出す景気対策は、しょせんは対症療法に終わってしまうことは火を見るより明らかです。
A行が経営を良くするためには何が必要か。ざっと考えて「利益を挙げる」「定期預金をしてもらう」「返済をしてもらう。すなわち貸し剥がしをする」「資本金を増強する」といった方策が浮かびます。しかしそんなことは今更わたしに指摘されるまでもなく、A行は既に実行していたはずです。実行して駄目だったからこそA行の現在がある。
聞けばA行も他の金融機関の例に漏れず、つい先日までマネーゲームに奔走していたようです。「お客様からお預かりした現金を企業に貸し出して利息を取る」という銀行の本分を忘れ、リスクの高い金融商品を買い漁っていた。その結果として不良資産が膨らみ、7%の金利で借金をせざるを得ないところまで追いつめられてしまった。
不思議なのは、この期に及んでなおA行の頭取は辞任していないことです。思い切り好意的に解釈すれば、A行の頭取は「経営を立て直すのが私の仕事であり責任だ」と考えて辞任しないでいるのでしょう。だとしたらおかしな理屈です。経営をしくじった責任を取らずして、どうして経営再建という、より困難な責任がともなう仕事ができるのでしょうか。
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