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こころ豊かで安全な経営とは何か

人間は「言っても聞かない動物」と知れ

 そこで我が社では分煙体制を徹底させました。ところがここでも問題は起きました。

 どういう問題か。たばこを吸うとき、社員はたいてい缶コーヒーかなにかを手にしています。ところが電話の呼び出しがあったり急な仕事が入ったりすると、彼らは、さすがにたばこは灰皿に捨てるものの、飲みかけの缶はそのまま近くの棚に置きざりにしてしまうのです。そしてそのまま忘れる。なにしろ我が社の社員は、脳まで筋肉で出来ていますから。

 見た目は悪いわ、だらし無いわ、汚いわ。おまけに置きっ放しの缶コーヒーを誰も片付けないので美観はいつまでも損ないっぱなし。そこでわたしは「飲みかけの缶は決して放置せぬこと」と指示をしました。我が社は「落ちこぼれ集団」です。指示の効果があったのはほんの数日で、また社員は飲みかけの缶を置きざりにしてしまうのです。

 わたしは業を煮やして、抜本的な対策を取ることにしました。喫煙場所を移動させると同時に、棚などを取っ払って、なにも物が置けないように計らったのです。これで社員は、飲みかけの缶を忘れることもなくなりました。実はここに、企業が抱える人的な問題を解決するヒントがあります。

 人間は、言ってもやらない/従わないものなのです。だから、社員に実行させたいと思ったら、嫌でもせざるを得ない状況をつくることです。それが「仕組み」です。禁煙手当のように具体的なメリットと結びつけて強制するのも仕組み。喫煙場所に棚を置かないようにして飲みかけの缶を放置できないようにするのもまた仕組みです。

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