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「産業突然死」の時代の人生論

第93回
“ルール破り”ブルドック判決のツケ

経営コンサルタント 大前 研一氏
2007年9月5日

 利益のための株の売買は、許されない行為なのだろうか。敵対的買収は、世界のいたるところで行われているが、それはすべて悪なのだろうか。いったい株式市場は誰のものなのか――。

 そんなことを考えさせる出来事が、ここ日本であった。米系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパンによる、ブルドックソース買収のTOB(株式公開買い付け:株を買いたい者が「いくらでこの会社の株を自分に売ってくれ」と表明すること)である。

 それに対してブルドックソースは、防衛策を発動した。スティール・パートナーズ以外の株主には新株予約券を、スティール・パートナーズには新株予約券の代わりに相当する金額を渡すという防衛策だ。これにより、全体の株数は増えてもスティール・パートナーズの持ち株数は変わらないので、持ち株比率が下がることになる。

 面白くないのはスティール・パートナーズである。この対立は裁判にまで発展することになり、7月に高裁、8月には最高裁第二小法廷でその判決が下された。その判決とは、スティール・パートナーズによる抗告を棄却し、株主総会で決めたブルドックソースの買収防衛策を適法と認めた。つまり、スティール・パートナーズが破れたのだ。

 この判決を聞いて、わたしはがくぜんとした。裁判官たちは、利益を求めて株を売買することを、あたかも「悪」と考えているらしい。特に7月の高裁での判決で、スティール・パートナーズは、自らの利益のために株を短中期で転売する「濫用的買収者」と決めつけた。

 最高裁の判決は、むしろ株主総会での決定を重視したものだ。つまり今回適応されたポイズンピル(敵対的買収を抑止・防衛するための手段)は株主の判断に従えば適法である、という解釈である。スティール以外の人々が4倍の株をもらうのが適法かどうかを争う裁判で、「もらう側の人が賛成したのだからいいんじゃない?」という論理である。

 今回はこうした判決が及ぼす影響について考えてみよう(今回はスティール・パートナーズに投資している人々の問題 ―― すなわちスティール・パートナーズとは何物か? については不問として、純粋に法廷論争の部分にのみ焦点を当てる)。

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