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「産業突然死」の時代の人生論

その3 ―― 知らないふりをしてごまかす

 三つめのだまし方は「知らないふりをしてごまかす」だ。

 中曽根康弘元首相は在任中の1980年代、「核兵器を搭載した米国海軍の船が日本領海を通っていた可能性が考えられる」と述べた。日本はご存知のとおり非核三原則を掲げている。「核兵器は持たず、作らず、持ち込ませず」という三つの原則である。ところが、中曽根時代には核兵器が国内に持ち運ばれていたというのだ。つまり、最近になって国家が国民をだます時代になったのではなく、もともとだましていたのである。

 米軍による国内への核の持ち込みについて、わたしは昔から指摘していた。米軍の原子力空母や原子力潜水艦がグアムから長崎、佐世保に向かう。グアムを出港するときには核兵器を積んでいる。ところが日本の佐世保に着くときに、その核兵器は搭載されていない。では、その核兵器はどこへ行ったというのだ。航海の途中で落としてきたというのか。もしそうなら北朝鮮あたりが拾いにいくだろう。

 政府は、このように誰が考えてもおかしな理屈を通して、非核三原則を守っていると国民に言っていたわけだ。もともと日本への核持ち込みについては、たくさんの退役軍人が「佐世保に持ち込んだ」と言っている。その全員がうそをついているとも考えにくいから、つまりそれが事実なのだろう。はっきり言えば、非核三原則はうそである。

 わたしは米国のマサチューセッツ工科大学の大学院で原子力工学を学んだ。クラスメートの半分近くが原子力潜水艦の乗組員出身であり、退役後、奨学金で博士号をとるために勉強していた。実は、この話は彼らから聞いた話である。つまり、わたしが日本の非核三原則の話しをすると、「?」という顔をするのである。そして、上記と同じ質問をするのだ。お前は、日本に寄るために核兵器を海洋投棄しろと言っているのか?――と。だから知らぬは日本国民ばかりなり、ということで、米国の軍人から見れば日本に寄港するたびに核搭載を外すマニュアルもないし、そういう指示も出ていない、という。

 だから、わたしは中曽根氏がまだうそをついていると見ている。彼は、「知らなかった、持ち込んだかどうかを協議しないことになっている。協議したら絶対に認められなかった」とも発言している。だが、ちょっと待ってほしい。本当にそういうことがあり得るのか。中曽根氏は、本当は知っていて、知らないふりをしていただけなのではないかとわたしは思う。もしそうなら、彼はちょっと女々しい。国民の前で事実を言うべきだろう(ただし核持ち込みについて元首相が言及したのは彼が初めてだ。その点だけは評価してもいいのだが)。

 当時の外務省の担当官の国会での答弁では「核持ち込みは日米安保条約によって“事前協議事項”になっています。いままで米国側が日本に事前協議を申し込んできたことはないので、核は持ち込んでいない、ということになります」となっている。木で鼻をくくったような典型的な官僚の答弁だ。なぜ、米国に直接聞いてみないのか? 聞けば、国民に言わないわけにはいかなくなる。非核三原則が崩れる。したがって、聞かないことにする。これでは浮気を疑った妻と夫の関係みたいなモンだ。知らないフリをしてごまかす。これが官僚の第三のテクニックだ。

 このように日本の政府は昔からうそをつくことを当たり前にしているのだ。年金から核まで。およそあらゆる重要事項で果たして国が国民に正直に知っていることを伝えていることなどあるのだろうか? 国家が国民をだます時代。もともとそうだったのかも知れないが、最近ますますひどくなっている、と思うのはわたしだけだろうか?

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