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「産業突然死」の時代の人生論

日本の縮図――優秀な社員を多く抱え利益が出せない日立

 日立製作所も大幅赤字のために、子会社の日本サーボを日本電産に売却する。上場している子会社を売却するのは、日立にとっては初めてのことだ。何しろ日立の最終赤字は2000億円という巨額である。従来予想では550億円だったのだから、大幅な下方修正が行われたのだ。

 日立に起こっていることは、他の会社にとってもよいケーススタディになる。なにを隠そう、わたしもそもそもは日立の社員だった。だからというわけではないが同社の社員は優秀で、当時博士号を持つドクターだけでも3000人以上いた。関連子会社も非常にしっかりしている。それなのに、2000億円もの赤字を出した。これが何を示しているか。21世紀は「従来型の優秀な人材をたくさん集めても駄目だ」ということにほかならない。

 なぜ日立がこんな体たらくなのか。それは優秀な社員はたくさんいても優れた経営者がいないからだ。しっかり経営できるものがトップにいないから、皆がバラバラな方向に努力して、会社としては利益を上げられない。日立の例からは、優秀な社員をたくさん抱えるよりも、数人の優秀な経営者が必要ということを学ぶことができる。

 これは日立だけの問題ではない。わたしは結局この問題は日本の教育制度に行き着くと思っている。日立の状況を見ると、日本の役人の状況を思い出さないだろうか。日本の役人も良い大学を出た優秀な人が多い。にもかかわらず日本政府は国民一人あたり600万円を超す借金を抱えている。なぜか。日本の教育制度が育てる「優秀な人材」では、これが限界ということなのだ。

 日立については、とても大会社とは思えないようなエピソードもある。コスト削減のために日立がやっていることをご存じだろうか。実は昼休みに建家の照明を消しているのだ。日本の最優秀の人材を集めて考えたコスト削減案が、照明を消すことなのだろうか。暗い社屋で時間を過ごしている優秀な社員の姿を想像すると、わたしは情けない思いに駆られる。

 わたしは最近、日立から講演会の依頼を受けた。当然、講演費を伝えたのだが、「それは高くて出せない。でも、話はしてほしい。OBのよしみでひとつ」などと言うのだ。ちなみにわたしは全国どこでも同じ料金である。他のところは出せて、なぜ現金だけでも1兆6000億円も持っている日立が出せないのか。そのセコさが駄目だと思うのだ。この会社の潜在的価値はどのようにしたら引き出すことができるのか、それを聞き出せたら無限の価値があるはずだ。その機会をわずかな講演料をケチってあきらめるというところがすごいと思う。この会社を研究すると何をやっていいのか悪いのかが分かろう、というものである。

 世間的には無名な小さい会社でも、100億、200億の黒字を出しているところもある。また任天堂も1兆円のキャッシュを持って、まだ利益上昇が止まらない好調さだ。日立は、そういう膨大な利益を上げている会社から何を学べばいいのだろうか。それをしっかりと考えてほしい。それが(講演の機会を無くした!)わたしから日立へのメッセージだ。

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