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第72回
買収・売却であぶり出された日本企業の姿

経営コンサルタント 大前 研一氏
2007年4月4日

 M&Aなど、企業の買収関連の動きが昨今目立つようになってきた。今回は企業を買収する、売却する、あるいは買収を阻止しようとする動きの陰に垣間見える、企業の姿を見てみよう。

 最初に例に挙げるのは、サッポロホールデイングス(以下サッポロHD)である。既報の通り、現在同社は米国系投資ファンドのスティール・パートナーズから買収を持ちかけられている。

 買収を成立させるべく、スティール・パートナーズは委任状集めを開始した。株主総会での委任状を集めて、「株主の意見は買収を支持している」という事実を作り、スムーズに買収しようという狙いである。一方のサッポロHDの経営陣はそれを阻止したいと考えている。そこで同社は買収防衛策の意図や買収への反論をまとめた意見を公表した。さらにスティール・パートナーズなどの反対を押し切って3月29日の株主総会では「事前警告型」の買収防衛策を可決している。

 この件について、わたしの見解を述べておく。サッポロHDは、スティール・パートナーズを甘く見ていたとしか言いようがない。こうなる前に打てる手はあったのだ。例えばわたしは、かねてより雑誌などで、サッポロHDからスティール・パートナーズに直談判するべきだと提案していた。そういうことをせずにこうなるまで放置していたのはサッポロHDの現経営陣の怠慢以外の何ものでもない。

 逆にスティール・パートナーズの立場で考えてみよう。彼らはサッポロHDの株主でもある。だから株主として、ポイズンピル(既存株主を優遇することで買収を阻止する防衛策)を埋め込むことに反対するのは当然のことだ。「理」は、どう見てもスティール・パートナーズにある。

 この後の展開として考えられるのはホワイトナイトの登場だ。つまり、正義の味方を気取ってサッポロHDにもっと好条件の買収条件を提示する会社が現れることだ。具体的には同業であるキリンかアサヒ、あるいはベルギーのインベヴ社あたりが、もう少し良い条件(高い値段)を出して名乗りを上げるかもしれないとわたしは見ている。

 いずれにせよ、自分の会社を守るのであれば、「買収目前」という段階になってから行動を起こすのではなく、会社の未来を想定しながら、必要なときに必要な対策をとっておくことが必要である。さらに言えば、他の人ではとてもマネのできないような立派な経営をすることが最良のポイズンピルであるということを肝に銘じておくべきだ。

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