ATM無料化で負担は誰が担うのか
大きな被害が出ている消費者金融会社、信販会社などをしり目に、銀行ではATM手数料無料化を巡る動きが進んでいる。三井住友銀行では2007年10月から、郵便局、JR東日本に設置されているATMを平日の昼間に利用した手数料をタダにすると発表した。昼間無料で使えるATMの規模は、メガバンクの中では最大となる。三菱東京UFJ銀行はコンビニATM無料化に乗り出す。
なぜATM無料化の流れが起こっているのだろうか。その背景には、銀行はもうけすぎという批判がある。ご存じのように不良債権を抱えた銀行は、税金が投入され、預金者に金利を払わないことによって危機を乗り切った。この人為的な低い金利によって家計が失った金利収入は総計331兆円であった、と先週日銀の福井総裁が公表している。これが個人部門にわたっていれば景気刺激策など不要であった、と言っているに等しい。また自らが監督する責任がある銀行がこれだけのカネを個人部門から“利益移転”した、と白状しているようなものである。今の銀行は過去最高レベルの利益を上げている。それなのに累損などがあり税金は払わない。そこで銀行に批判が集まっているのだ。ATMの無料化は、批判の矛先をかわす目くらましの手段なのである。
ここで「それはちょっとおかしいのではないか?」と思うのはわたし一人だけではあるまい。本来ならATM無料化なんて小手先の対応をするのではなく、ちゃんとした利息を支払って一般預金者に還元すればいいのである。よほど銀行は預金者に利息を払いたくないらしい。もちろんATM無料化も「やらないよりはマシ」とは言える。言えるのだが、無料化したとしても、その手数料を誰かが代わりに負担することになることは自覚しておきたい。
ここで思い出すのは、コンビニエンスストアなどにATMを設置しているセブン銀行である。同行は、その手数料で利益を上げてきた銀行だ。セブン銀行がもうけている仕組みを図示したのが以下の図である。キャッシュカードを発行している銀行がセブン銀行に最高で150円の手数料を払っている。これがセブン銀行の利益のもとだ。
では、ATM利用料がゼロになったらどうなるか。二つのことが考えられる。一つは「手数料を預金者からもらわないことにするから、セブン銀行さん、ごめんなさい」と支払わない、あるは半額くらいに値下げするケース。もう一つは、キャッシュカードを発行している銀行が、預金者に代わってセブン銀行に手数料を引き続き支払うケースだ。
もし手数料をゼロにしてもセブン銀行が150円のままであったら独占禁止法にかかってしまうかもしれない。独占的な立場、あるいは強者の立場を利用して、価格統制をしているという理由で。かといって、キャッシュカードを発行している銀行も、いくらなんでも自分が手数料を無料にして収入が無くなるのにセブン銀行に元通りの150円は払わないだろう。いや、銀行はそれくらいのみ込んでも誤差のうち、というくらいもうかっているのか。結局、手数料を負担するのは誰なのか、その情報がどこからも聞こえてこない。
果たしてどちらの方法が取られることになるのか注視したい。ATM手数料をタダにすることで、一番の被害者はどこになるのか。今、裏では激しい戦いが繰り広げられているのだろう。だが、いずれにせよ、預金者に対する利息を上げるという、本来あるべき銀行の姿はそこにはない。消費者、預金者の視点に立った金融庁の見解を是非、聞きたいところだ。
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