“ローエンド層”向け金融の歪み
グレーゾーン廃止に限らず、金融業界は今、大きく変貌しつつある。特に変化が大きいのは、ローエンドの部分だ。ハイエンドの部分、分かりやすく言えばお金持ちの層なのだが、そこに関しては今の問題は金利が低すぎる、ということに尽きる。しかし、ローエンド層、つまりサラ金などのお世話になっている人々についてはどうだろうか。日本は現在、世界でもまれに見るローエンドの金融が賑やかな国だ。駅前一等地はサラ金が占領している。まさに「悪貨が良貨を駆逐する」状況なのである。
実は、サラ金の利用者は相当な数に上る。例えば人口100万人程度の県でも、サラ金の審査を受ける人は、年間400万人いるという。なんと人口よりもサラ金の利用者が多いのだ。この400万人という数は、サラ金が利用している審査のコンピューターシステムに問い合わせてくる利用者の数である。サラ金から借りようという人は、名前を替えたり、読みがなを替えたり、住所や電話番号を替えたりして、違う人物のふりをして審査の目をかいくぐろうとする。多重債務者はそのようにして手を替え品を替えて何度も審査を受けるので、人口よりも審査の数が異常に多くなってしまうのだ。
そういう人を対象に貸し金をするとどういうことになるか。言うまでもないだろう、貸し倒れのリスクが高まるのである。貸し倒れが増えれば、仮に20%の金利で貸したとしても、そのうち8~9%が取損になってしまう。だから25~26%の金利でないと商売としてやっていけないのが実状だったのである。
こういう問題を回避するには、銀行が生まれ変わる必要がある。長い間、電話代や電気代などの月末自動引き落としを間違いなくしてくれている優良な顧客が「借金したい」と言ってきたときは、銀行はきちんと面倒を見てやればいいのだ。銀行自身が持っている、その人に関するデーターを見れば、その人がどのくらいお金に関してきちょうめんな人か分かるはずだ。そのデーターを見ることもしないで、消費者金融会社に資本を入れている。日本の銀行は自分の顧客情報を分析するツールを持たないどころか、その気もないのだ。こうした事情から、自らの顧客に対する貸し出しサービスをすることなく、サラ金や消費者金融に融資する、あるいは出資する銀行は、ライセンス返上すべきだ、とわたしは長年主張してきている。
銀行が自らまじめに個人への融資をするとどうなるか。データー的にちゃんと返してくれることが分かっている人にお金を貸すなら、どれくらいの金利が可能だろうか。なんと世界最先端の銀行では0.4%くらいのスプレッド(貸出金利から預金金利を引いた差)で利益が出るようになっている。仮にわたしが銀行にお金を預けたときにもらう金利を1%とすると、銀行は1.5%で貸し出してもちゃんと利益が出る。それが世界最先端の銀行の業務コストだ。もし銀行が2%で貸したら大儲けできる。
そういう安い金利で貸す金融を充実させて、徐々にリスクの高い人へは金利を高くしていくのだ。リスクに応じて金利を高くしていく、つまりアセット・ライアビリティー・マネジメント(※)をやっていくのである。最も高いリスクの人には20~30%というものも出てくるだろう。それは仕方のないことだ。リスクに応じた金利、というのが世界の常識なのだから。
※ Asset Liability Management。金融情勢の変化に伴って発生する様々なリスクをヘッジしながら、資産と負債の最適な組み合わせを同時に決定し総合的に管理する方法。
ところが日本の場合、人口の4分の1が、20~30%という高い金利で借金をしている。その高い金利が払えずに回収不能になるケースが多々あるわけだが、そもそもその回収できなかったお金を負担しているのは誰かを考えてみてほしい。それは、ちゃんと返している人なのだ。きちんと返済している人までもが、返さない、返せない人のお金の分まで高い金利で返済していることになっている。どんぶり勘定の最たるものだ。
ちゃんと返している人なら、本来はもっと低い金利、例えば1~2%でいいはずだ。ところが、そういう人まで20%以上の高い金利を払わされているのが現実なのだ。日本のこの業界は歪みきっている。今回の貸し金法の改正以前の問題として、そもそも銀行の役割は何か、という抜本的な問いかけが必要だ。このままでは法人、個人ともに被害者続出になるだろう。
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