第69回
モバイルの風を起こすのはだれ ― FON、iPhone、イー・モバイル
経営コンサルタント 大前 研一氏
2007年3月14日
どれほどユニークなプロジェクトであっても、市場の動向や投入タイミング次第で将来性が違ってくるものだ。そうしみじみ実感するのが FON である。 FON とは2004年にスペインでスタートした公衆無線LANサービスの一つだ。日本での知名度は現状ではいまひとつだが、海外ではまずまず成功を収めているといっていいだろう。世界での実績を見ると、アクセスポイントは約4万、会員数が約19万となっている。出資者にはグーグルやスカイプの名前も挙がっている。公衆無線LANのサービスを使えば、どこでも検索やスカイプ(インターネット電話)が利用できるので、両社が出資するのも当然ではあろう。
その FON が昨年(2006年)末、日本市場に参入してきたのである。日本では2万から3万のアクセスポイントを目標にサービスを提供すると発表している。つい最近もISAOと提携した。ISAOはCSK系列のISP(インターネットサービスプロバイダー)で、名称は設立者の大川功氏(故人)にちなむ。これでISAOの契約者も FON が利用できるようになったわけだ。
もっとも、これまで日本市場に公衆無線LANのサービスがなかったわけではない。ISPやライブドア、パソコン周辺機器メーカーのバッファローなどがサービスを提供してきたのである。では FON はそれら従来のサービスと何が異なるのか。大きな違いはアクセスポイントの設置方法だ。
念のためアクセスポイントについて軽く触れておく。これは無線によるインターネットへの接続口のことだ。ここにパソコンなどの端末からアクセスすることでインターネットが利用できるようになる。ところが無線LANの場合、端末とアクセスポイントの接続可能距離は、そう長くはない。だから公衆無線LANのサービス業者にとってはアクセスポイントをどれだけたくさん設置できるかがユーザーにとっての利便性につながり、また他社との差別化戦略にもなる。
従来のサービスでは、ISPなどの業者が駅や街角、喫茶店、ホテルなど、人の集まりやすいところにアクセスポイントを設置し、それを契約ユーザーが利用するという方法が取られていた。ところが FON では、アクセスポイントを設置するのは業者ではなく一般ユーザーである。一般のISPを使ってブロードバンド接続をしているユーザーが、自宅に FON に対応したアクセスポイントを設置し、それを他の FON ユーザーがアクセスできるように開放するのだ。つまり、自宅のブロードバンド環境を、行きずりの第三者にも公開してしまうわけだ。
そして自宅のアクセスポイントを開放したユーザーは、他の家の FON のアクセスポイントが無料で利用できる。開放しなくても、月額料金を支払えば FON のアクセスポイントを利用できる。このように一般ユーザーのネットワークを使って、公衆無線LANを構築するのが FON なのである。アクセスポイントの設置には多大なカネがかかるが、これを利用者負担でやってしまおうというところがユニークな点である。スペインで2004年にスタートした FON は、ヨーロッパを中心にかなりの勢いで普及しつつある。
では、日本で成功するのだろうか。わたしは FON にコンセプトの面白さこそ感じるものの、将来性については疑問に思っている。その理由をこれから述べていこう。
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