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「産業突然死」の時代の人生論

政治的な配慮でねじ曲げられた方向性

 わたしは都の特命プロジェクトチームを指導したが、専門家の意見も入れた方がいいとの思いからマッキンゼーの日本事務所に依頼して、手弁当で協力してもらうことにした。彼らの提言は当然わたしのものとは異なっていたが、常識的には理解できるものだった。バーチャル銀行で集めた金に関して、わたしは基盤整備に使うことを提案したのに対して、彼らは主として利ざやの大きい、かつ安全性の高い住宅ローンに向けることを提案した。

 ところが、石原都知事はもっと違う方向に考えを発展させてしまったのである。それは「大銀行にもできない中小企業の支援」と「ベンチャーへの支援」である。彼はこの二つを推進していくと言い出したのだ。

 確かに政治家にとってはこの二つが重要なのは分かる。当時は中小企業やベンチャーは資金を集めることに苦心していた。銀行からも貸し渋り、貸しはがしなどが行われ、倒産が相次ぐという状況だった。中小企業やベンチャーを支援することは、政治家としても重要課題だと考えたのだろう。

 だが、それは政治家としての立場で考えたものであって、わたしのようなビジネスコンサルタントにとってはとんでもない話なのだ。そういうことは銀行が利益を上げ、儲かる状態になってから、その利益の一部を使って手を出すべきことである。利益も上げていないうちから、そういう支援に着手しては痛い目を見るのは明らかだった。

 いや、そもそも東京都の役人でベンチャー企業の目利きができる人材がいるのか。目利きもできないのに、支援をすることができるのか。起業家養成学校アタッカーズビジネススクールを10年以上経営し、起業家を見抜く仕事を長年やってきているわたしから見ると、ベンチャー支援などは大企業でさえもできないと思っている。ましてや役人や政治家にその嗅覚があるとはとても思えない。一方の中小企業への貸出しは大銀行でさえも不得手な領域である。いまの金融庁のマニュアルでは貸し出してもすぐに引当金を積まされるのが関の山である。

 だが、石原都知事は、政府や大銀行がやらないからこそどうしてもこの二つをやらねばならない、と強く主張した。都知事にそこまで言われては‥‥ということで、わたしはメトロポリタン銀行特命プロジェクトから2002年の半ばに手を引いたのである。もともとボランティアであり、契約があったわけでもなく、お互い力を合わせてメリットがあるならやるし、無いなら止める。それだけのことである。プロジェクトチームメンバーは銀行業務の事を全く知らなかったが、皆優秀で、夜遅くまでよく頑張ってやってくれたと思っている。

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