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「産業突然死」の時代の人生論

当初の想定はバーチャルな銀行

 ところで、わたしの考えでは、メトロポリタン銀行は、既存の銀行の支店を拝借する形のバーチャルな銀行を想定していた。既存の銀行の支店には3桁の「支店番号」が割り振られている。「000」から「999」まであるので、1000もの支店を作ることができるのだが、実際には多くて200程度である。つまり、余っている支店番号がたくさんあるのだ。それを拝借するのである。

 日本のすべての銀行に「東京都支店」を用意してもらい、それをバーチャルな銀行として活用するわけだ。だから、どの銀行に行っても「東京都支店」の口座を使えば、メトロポリタン銀行が利用できる。都が補助金を支払ったり、都民が各種税金などを振り込むのも最寄りの銀行でいいということになる。振込先はどこに行っても東京都支店口座、ということになる。

 これにはいくつかのメリットがある。まず、既存の銀行とは共存でき、彼らの業務を圧迫しない。また東京都として新たなハコモノを作らないで済む。もちろんATMなども既存のものを利用する。

 さらに都の資金は都庁の一角にメトロポリタン銀行本店を作り、そこに貯めておく(この本店開設に対しては国から銀行ライセンスを取得しなくてはならないが、それを何らかの理由で拒否された場合には小さな銀行を買収すればいいと考えていた)。支払い日がきたら本店からすべての銀行の東京都支店を経由して各口座に振り込む。都民が預金をしたければ最寄りの銀行窓口から東京都支店に口座を開設すればいい。窓口銀行には手数料を払うことになるが、日本で最も業務効率のいい銀行になる計算である。しかも預金の保管場所はAA+以上の格付けが予想されるメトロポリタン銀行である。

 これがわたしの提案の骨子だ。もちろん、日本初の本格的なインターネットバンクとなるなど、わたしの考えがより細かく、詳しく盛り込まれていたことは付け加えるまでもない。

 「ここで重要なことが二つある」とわたしは付け加えた。その一つは、集まってきた資金を主として都市の基盤整備に活用することだ。東京都には大地震で液状化するような地盤のところがいまだたくさん残っている。火事になれば消防自動車も入らないような道路事情の悪い所も随所に残っている。こうした基盤整備のための財源に、地方債を免税債として発行する。その役割をメトロポリタン銀行が担うことで、信用度も増えるだろう。公的な新銀行を設立する目的が単に金融危機を避けるためだけならほかに方法はいくつかあった。あえて東京都がやるからにはより大きな大義が必要である。これは1995年に都知事選に出馬して青島幸男氏に惨敗したわたしのやりたかったことの一つでもあった。

 もう一つは、東京都が自分で経営してはいけないということだ。これは提案をしたとき石原都知事にクギをさしておいた。役人や政治家に銀行が経営できるはずがない。彼らが経営したら、おかしな方向に話が進んでしまうと確信していたのである。わたしの提案の本丸がバーチャルになっているのもそのためだし、また既存の仕掛けをフルに利用することによってほとんど数十人のスタッフで経営できるようにしたのもそのためである。

 こうして民業を圧迫しないで、民間銀行と協力しながら事業を進めていく。東京都にとっても民間銀行にとっても、メリットのあるプロジェクトになるはずだった。もちろん都民は大歓迎するはずであった。

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