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「産業突然死」の時代の人生論

税の枠組みを抜本的に再検討する時

 では、法人税も所得税も引き下げるとどうなるか。両方とも減税したら、どこから税金を持ってくればいいのか。わたしは、税金を取る理論的枠組みの再検討をいままでにあらゆる機会をとらえて提案している。大きく分けて二つのカテゴリーがある。

 一つは産業政策と連動した基盤を作るための税金。道州制に移行した場合には道州税として付加価値税を提案している。いまの消費税と同じようなものだが、産業のあらゆる段階でつけられる付加価値の5%くらいを想定している。GDPは国民の生み出す付加価値の総和だから、500兆円のGDPの5%というのは25兆円の税収となる。これが道州によって徴収され、産業基盤の構築、人材育成などに使われる。産業を伸ばさない限りこの税収は増えない。国からの補助金で無駄な基盤を作るのではなく、自分の考えた産業育成に必要な基盤を作るために投資するから、無駄もなくなる。道州はその地方の産業が求める人材育成をする。当然十分な人材がいなければ、海外からでも招致するし、人材だけでなく企業にも来てもらうことになる。自助努力でパイを大きくしないと税収が増えない、というところが今と大きく違う点である。

 二番目の税は資産課税である。これは所得というフロー(流れ)から税金を算出するこれまでのやり方を改めるものである。法人税も所得税も、お金のフローから税金を算出している。もはやそういう時代ではないのだ。

 21世紀にはフローではなく、ストック、つまり資産に税金をかければいい。それが著しい経済成長を終えた老体国に合った税金のシステムだ。資産を持っている高齢者、広い土地を持っている個人や企業などから薄く広く税金をもらう。この課税は市町村の仕事となる。コミュニティーの安全と安心などのために税収を使っていくことになる。小さな自治体では税収が足りなくなるので自然な単位としてのコミュニティーが出来上がるだろう。おそらく30万人くらいの単位となるに違いない。

 個人金融資産1500兆円に1%課税すれば年間15兆円となる。また不動産関連の資産が2000兆円あるからそれで20兆円の税収となる。これを嫌って要らない不動産が売りに出されれば土地の値段も下がる。企業のもつ機械や設備、あるいは知的財産などの無形資産には課税しないことによって高度付加価値産業への転換を促進することもできる。

 資産課税に移行すれば、相続税も要らない。資産を誰が持っていようが、所有者が変わろうが、1%を払ってくれさえすれば税収は中立である。また付加価値税に完全に移行すれば法人税は要らない。企業の最終利益は操作されやすいが、付加価値は厳正に測ることができる。そうなると会計も簡素化され、恣意的な部分や解釈の違い、などという税務署との争いもなくなる。税務署の職員も大幅に減るだろう。

 資産課税と付加価値課税。この二つで基本的に今の税収は確保できる。また道州とコミュニティーの役割分担もはっきりする。

 
 

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