バックナンバー一覧▼

「産業突然死」の時代の人生論

道州制導入といっしょに税システムの転換を

 だが現実には、今の「中央集権+ばらまきの統治機構」のままでは財政改善はできないだろう。

 その要因は何か。いまの税システムは、国税の規模が大きく、地方税は小さい。そして国税を地方に還付するという流れになっている。今のところ法人税が増えているので、ちょっと息をついてはいるが、安心はできない。それにこの「国から地方へ」という税金の流れが、腐敗と権力の歪みの元になっているのも事実だ。この税制のシステムを根本から変えないと駄目なのだ。

 わたしは、今の税制を根本から変更して、道州税とコミュニティー税の二つにするべきだと思う。

 道州は産業振興、すなわち雇用創出のためのあらゆる責任を負う。そのための税金が道州税である。これには今の消費税に代えて付加価値税を用いる。GDPのあらゆる付加価値に対して均等に課税をするのである。例外は設けない。

 さらに今の多くの税を全て廃止して資産課税一本にして、これをコミュニティー税とする。これにより所得税、相続税、法人税などはすべて廃止できる。コミュニティーとは人口30万人くらいを標準とした市町村に匹敵するもので、生まれ育ち、価値観の形成される「我が町(コミュニティー)」である。安全・安心の責任を負う。もっと前向きに言えば快適住環境の提供に責任を持つ。

 こうした新しい考え方を導入しなければ、道州制議論も、歳費削減義論も行き詰まっている現状の延長線上の議論となり、大きな変化は生まれない。安倍首相も道州制を導入すると宣言している。それを契機に、統治機構だけではなく、税制も一新すべきだ、というのがわたしの従来からの提言である(新・国富論、平成維新など参照)。

 上の図は、現在の税システム(左)と、わたしの提案する新システム(右)を対比したものだ。新システムがいかにシンプルなものかがよく分かるだろう。

 まず、道州税だが、これは流通のすべての付加価値段階で、税を掛けていくというものだ。インボイス(請求書)方式のバリュー・アデッド・タックス(付加価値税)で、現在のヨーロッパでも採用されているシステムだ。取りっぱぐれの多い消費税よりもずっと効率よく税金を集められるはずである。税率が5%であれば25兆円、10%だったら50兆円にも上る。

 道州はこの税金を用いて人材の育成を競い、産業基盤を整え、諸外国や他の道州からの投資を呼び込む競争をすることになる。今世界で繁栄しているところを見れば例外なく海外からの投資(FDI)で経済が伸びているところばかりである。自国民の税金で産業成長、などと言っている国は民衆が重税にあえぎ、産業衰退を余儀なくされている。世界中に有り余る資金をいかに呼び込むか、が道州制の大きな狙いである。別な言い方をすれば、自国民の負担をいかに軽くするのか、を考えるのが21世紀のボーダレス社会における政治家の役割なのだ。

 コミュニティー税は資産、固定資産(土地や建物など)や流動資産(現金など)に対して掛けていくものだ。当初の税率は1%くらいで十分だろう。仮に持っている地価が上がれば税も上がる。もし持ちこたえられなくて税金が払えないなら売ってもらう。そうすれば今度は地価が下がる。つまりはその人の財産に即した税を掛けるのである。給料やその他の所得が増えない今の日本で、資産だけはどんどん増えている。地価が下がったと言ってもまだ諸外国に比べれば対GDP比率では2倍以上ある。今の日本の総資産は2700兆円あるので、1%の資産課税なら27兆円になる。金持ち・資産もちには厳しいが、その代わり相続税も、所得税も、法人税もないので極めて透明、かつ公平な課税方法である。

 こうして道州税で25~50兆円、コミュニティー税で27兆円、合わせて55~77兆円の税が集められる。55兆円でも、既に今の税収より多い。

 さて、ここからがこのしくみの肝心な点だ。税の徴収は、国ではなく地方が行う。そして、地方は国に対して上納するのだ。つまり、国と地方の関係がいまと逆になるわけだ。地方が国に対して5%上納すると、3.9兆円になる。国はこのお金で、軍事費や外交費を賄えばいい。税のシステムを一新するなら、これが第一だろう。

 わたしが今述べたことは、決してとっぴなことではない。それは、地方税の課税ベースを国ごとに見てみれば分かる。

 税が、所得税、法人税、資産課税、消費税の項目で徴収されている点は多くの国で同じ。ただ、米国、カナダなどを見ると、傾向として、州は消費税の割合が高く、市町村は資産課税の割合が高いことが挙げられる。民主主義の発達したスイスなどでは地方で徴税して国に上納するシステムを採用している。「国はみんなの共同経営だ」ということを分かりやすくするには、そういうふうにした方がいい。

 国家というものが国民の統合の象徴であり、財産であり、また未来であるとするなら、それを磨いていくためのカネと時間を惜しまない――そういう精神を育むためには、仕掛けそのものを変えなくてはならない。今のように、いかに国をだまして「おらが村に」我田引水するのかが政治家の役割であり勲章――というのは明らかに仕掛けが悪いからだ。親のありがたみは、子が養うようになってからしみじみ分かるもの。親から小遣いをもらっている間は、もっと、もっと、スネをかじることしか考えないものだ。国と地方の関係とて同じ事だ。

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。