CM見たくない人だけ有料で視聴する新しい方法
新しい視聴方法に合わせた広告方法ということでは面白い例がある。米国の地上波テレビ局が始めたインターネット配信の方法だ。米国の地上波テレビ局大手4社が、最近、インターネットでの番組配信を相次いで開始した。フォックスは傘下の若者向けサイト「myspace.com」で、人気テレビ番組の『24』を1話あたり1.99ドルで配信している。
このサイトがユニークなのは、広告付きなら無料で見られることだ。つまり、1.99ドル支払えばCMのない状態で視聴できるが、CM付きでよいなら無料で見られるのである。わたしは、このやり方ならうまくいくかもしれないと考えている。従来のCMスキップ対策は、CM付きの状態で放送したものを、見るときに飛ばさせないようにする方法を考えている。一方、myspace.comの方法は「CMなしで見たいならお金を払ってください。払いたくないならCMを見てください」というやり方だ。
つまり、放送する段階で視聴者にCMを見るか見ないかを選択してもらうのである。CMを飛ばす価値を金銭に置き換えるという意味でも面白い。広告を我慢すれば手続きも楽だし、支払いも不要。「2ドルもするのだったらCMは我慢して見る。興味ないCMだったらトイレにでも行くよ」という人もいるだろう。わたしは、実はこれこそが正しいやり方ではないかと考えている。あくまでも「今の段階では」と但し書きが付くが、視聴者心理をよく考えているなあと思う。
USENのGYAOは無料サイトだが広告が前に出てきてうざったい、ということで急速にYouTube(動画を共有・閲覧できるウェブサイト)などに置き換えられてしまっていることと併せて貴重なデーターとして記憶しておくべきだろう。
このビジネスモデルで気を付けなくてはならないのは、PCやTivoのような大量の記録媒体を持っているものにダウンロードさせたら駄目、ということだ。視聴者は無料でダウンロードして、CMを飛ばすなど好き勝手に加工できるからだ。ところがこれを防ぐのは難しい。セキュリティー対策は常にイタチごっこであり、どれほど強固なプロテクトをかけてもいずれ破られるものだからだ。前述した『24』も、遠からず無料で、しかもCMをスキップして見る者が現われるだろうな、と思っている。
経営管理者向けに番組を放送しているわたしの会社(bbt757.com)でも動画をボッドキャスティングで配信する技術は出来ている。DRMをかけたりコピーワンスで複製できないようにしているのだが、現段階では完全なセキュリティー対策がないので、コンテンツをごっそり抜かれる恐れがないとはいえない。したがっていまのところストリーミング配信によるVODまたはスカパーによる衛星配信だけ。全ての番組を自由に見られるようなサービスは提供していない。
コンテンツ事業はその価値を認めてくれる人々の善意によって商売が成り立っている。コンテンツそのものを盗んで廉価に提供するゲリラ商売をやられては事業が成り立たない。日本のアダルトなどがいきなり米国のYouTubeから一斉に無料で送られてくるようになった現実を直視しなくてはいけない。
サイバー社会においては、国境もなければ法律もない。実質的には無法地帯である。ある国の違法行為が必ずしも別な国の違法行為とは見なされない。また国によっては違法コピーが文化となっているところもある。サーバーでそうしたモノをためて流して高い“視聴率”を稼げば、そのサイトに広告を載せたいという会社も現れるだろう。最後は誰が一番顧客の関心を握っているか、である。トラフィックの一番盛んなところにビルボード広告を出すように、スキップされない確かなサイトに広告は引き寄せられていく。また、違法コピーであってもそれが集まれば集客力だけで魅力が出てくる、という解釈もできる。
セキュリティーは「破られる方が悪い」くらいの覚悟を持たないと世界市場でインターネット商売はやっていけない。それが嫌なら、最初から公開しないに如くはないのである。
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