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「産業突然死」の時代の人生論

第33回
見えてきた村上ファンドの手口、業界の裏側

経営コンサルタント 大前 研一氏
2006年6月21日

瀬戸際に立っていた阪神株問題

 村上世彰氏がインサイダー取引で逮捕されるなど、彼の率いる投資ファンド、いわゆる村上ファンドを巡る動きが注目を集めている。

 わたしは1年以上前から「村上氏はグリーンメーラーだからその最後を見ていたほうがいい」と言っていた。グリーンメーラーとはある会社の株を大量に買い、その会社、あるいは関係者に買い取ること(自社株買い)を迫る業者のことだ。米国では1970年後半から80年代に活動したT・ブーン・ピケンズなどが有名だ。だが、彼らの最後はいずれも惨めなのだ。グリーンメーラーはとどまるところを知らずに突き進むことがある。そのためどこかで破綻するか大損をして終わるのだ。

 例えば阪神、阪急問題はどうだったか。阪神、阪急問題では、村上ファンドが大量に阪神電気鉄道の株を購入したことを受けて、阪急ホールディングスが阪神株のTOB(株式公開買い付け、Take Over Bidの略)を行った。村上ファンドも応じてTOBが成立した。

 しかしよく考えてみてほしい。もし彼が逮捕されなかったらどうなっていただろうか。村上ファンドは2006年4月29日の時点で阪神株の46.65%を取得した。これは株主総会でプロキシーファイトが起こせる、つまり株主が会社側と異なる提案をして戦っても勝てるということを意味する。阪神電鉄でプロキシーファイトが起こったら、村上ファンドが圧勝してしまう。阪神の経営陣は何をやっても無駄だ。

 グリーンメーラーである村上氏は、阪神に自社株買いを求めた。しかし阪神は買ってくれないので、村上ファンドの社員を経営者として送り込むという株主提案をしたのである。だが、これはブラフであって本気ではなかったのだろう。仮に村上ファンドが本当に経営者を送り込んでいたら、株価が暴落していたのは間違いない。その結果、村上ファンドは大損することになっただろう。

 しかも、その段階では村上氏本人が取締役になっているのだから、自社株を自由に売買することができない。インサイダー取引になってしまうからだ。だからわたしは、村上ファンドが経営者を送り込むという株主提案をした段階で、ジ・エンドだと思っていたのだ。仮に逮捕されなくても村上氏は破綻していたはずなのだ。

 
 

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