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「産業突然死」の時代の人生論

第30回
アジア通貨はいつまで売り浴びせにおびえ続けるのか

経営コンサルタント 大前 研一氏
2006年5月31日

地域通貨単位の研究がスタート

 日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)、いわゆるASEAN+3は、5月4日の財務相会合において、アジア地域の貿易促進を目的とした「地域通貨単位」の実用化に向けた研究を進めていくことで合意した。これは2000年にASEAN+3がタイのチェンマイで開いた蔵相会議での「チェンマイ イニシアチブ」を拡充したものといえる。谷垣禎一財務相は「有用性の検討で合意した。まずは学問的な研究から始めるが、だんだん発展させていく」と述べている。

握手する日中韓財務相
日中韓財務相会合を前に、韓国の韓悳洙副首相兼財政経済相(左)と中国の金人慶財政相(右)と握手する谷垣禎一財務相(インド・ハイデラバード)
(写真提供:AFP=時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 地域通貨単位とは、それぞれの国の通貨を共通にしたものである。とはいうものの、実物の紙幣や貨幣が流通されるわけではない。各国内では今までと同様に、円や元、ウォンなどが使われる。つまり地域通貨単位とは、各国の間で計算上用いられる通貨といえるものだ。

 だが、現実には各国での経済力には大きな差があるために、それぞれの通貨の価値が異なるのが実状である。だから共通通貨を作るからといっても、単純に各通貨を同じ価値として扱うことは当然できない。そこで、各通貨を加重平均して調整しなくてはいけないわけである。これはEU共同体の通貨ユーロの前身となったECU(エキュー:欧州通貨単位)と同じ考え方だ。各国が自国通貨を発行しながら経済規模、インフレ率、成長率などを加味して加重平均をECUとして出していた。当時の状況から見ればドイツマルクで代用してもいいくらいだったがEUはマーストリヒト条約に基づいて着々とユーロへ歩を進めていった。

 アジアの共通通貨単位というアイデアは、私が6年ほど前に上梓したThe Invisible Continent(Harper-Collins)(邦題『新・資本論(東洋経済新報社)』)という本でも取り上げている。アジアの共通通貨を議論しないと、ドルとユーロとの戦いの中でアジアはいつまでも狙われることになる、ASEAという単位の共通通貨を出すまで状況は安定しないだろう、と私は主張した。

 現在のアジアの状況は、常に欧州や米国のヘッジファンドに売り浴びせられ、さやを抜かれる危険性を秘めている。だからアジアは一つにまとまらないといけない。1国単独のままでいたら、アジア危機の際のタイのバーツや韓国のウォンのようにたいへんなことになる。また通貨が高いところにきてしまっているタイは政治空白が少なくとも10月までは続く見通しだし、インドネシアのルピーも高い。ユドヨノ大統領の支持率は最低で、津波、地震、火山、アチェの暴動など、ヘッジファンドから見れば空売りに好都合な材料が全てそろっている。第二次アジア危機の可能性が高まっている、と見ておかなくてはいけない。理由は1997年から10年近く経つが、アジアは何も具体的な仕掛けを構築してきておらず、各国とも今、経済的には再び宇宙遊泳状態になっているからである。

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